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| ファーストリテイリング 柳井正会長兼CEO |
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今回、企業家大賞「カジュアルライフ創造賞」に輝いたのは「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング会長兼CEOの柳井正氏。素材開発などの企画・デザインから、中国でのローコスト生産、店舗展開まで一〇〇%自社でコントロールするユニクロ・ビジネスモデルを創造。低価格・高品質のユニクロ商品が爆発的にヒットし、幅広い年代から圧倒的な支持を得た。急激な拡大と大量生産が原因で一時失速するも、今年は見事に復活した。二十年前、広島でのユニクロ第一号店オープン以来、ファーストリテイリングはどのようにして成長したきたのか。その経営戦略と、柳井が経営者として持ち続けてきた思いについて語る。
ユニクロ第一号店オープンで実感した「"金鉱"の発見」
ユニクロ第一号店は一九八四年六月二日午前六時、広島の袋町という場所でオープンしました。今年、二十周年になります。この二十年で実にいろいろなことがありました。 二十年前といえばDCブランドが流行っていた時期です。山口県宇部市出身の僕にとって、大都市といえば福岡か広島だったので、できればそこでオープンしたいと思って物件を探したのです。当時は若い人が店を出す場合は裏通りが流行っていましたが、見つかった物件は本通りのマンションの一、二階。店の前には喫茶店。商店街も走っていました。
今、振り返れば、当時の僕達はまったくの田舎商売で、オープン一カ月ほど前から、近くの中学、高校前でビラ配り。一週間前から泊まり込みで開店準備をしました。一発で有名になろうと考えたユニークな販促と朝六時オープンという方法のおかげで、開店と同時に店は大盛況。今までで一番人数が入ったほどで、土日は終日入場制限をかけました。セルフサービス、低価格も当たって、「金鉱を見つけたな」と思ったものです。
オープン前は、カジュアルブランドということで、来店するのは若い人ばかりかと思っていたのですが、実際店を開けてみると、カップルやファミリーの多いことに驚きました。ノンエイジ、男女両方、あらゆる人がカジュアルファッションを求めていることがわかり、商品構成も変えることにしたわけです。
その後、直営店二十二店舗となる頃には、年間三十三店をオープンし、三年で百店舗を作り、上場しようと考えていました。ただし、先立つものはまったくない。銀行から借金するには担保が必要ですが、それもあまりない。そこで年に三十店ずつ作って三年で百店舗を作り、上場するという計画を話したところ、「それならいいですね。やってください」という答えをもらえました。
それでも僕と父の個人の財産を全部担保に入れなければ、銀行はお金を貸してくれませんでした。一号店から十年後、チェーン展開してから三年後の九四年に上場した時、当時のお金で百三十四億円入りました。それで銀行の担保を全部はずしてもらって、「これから、お金に困らなくていいな」と思ったのを覚えています。
経営者がしっかりしていなければ企業は必ずつぶれる!
当初から僕は、いい企業、いい事業とは急成長、高収益であると考えていました。インフラが整った日本では、爆発的に成長できるということを認識しなくてはならないんです。売上高が三千三百億円となった今、いい企業、いい事業をやっているかな、と感じているところです。まだまだ成功とは言えませんが、ファーストリテイリングがうまくいった要因をこれからお話したいと思います。
僕は経営者がしっかりしていないと、企業は必ずつぶれると考えています。経営者は会社をつぶさないために存在しているわけで、トップとしての責任があります。成長も収益も、失敗も不祥事も、すべてトップの責任。それは決して景気のせいでも部下や取引先のせいでもありません。同業者を見ても、うまくいった企業と、うまくいかない企業では、トップの真剣さが違いすぎます。運をつかむ真剣さ、事業に集中する真剣さ、絶対いい成績をあげようとする真剣さを一〇〇%持たなければならないのに、ほとんどの経営者はそれがあいまい。本当に真剣になればうまくいくものです。
タイミングや運も当然大事ですが、それは自分自身でつかむものです。また企業というものは社会の一員。世の中に歓迎されない企業は絶対に成功しません。その時は歓迎されるように作り変えることが大切です。それも十~三十年という長い流れの中で考えて、変えていくこと。経営をしていると、今日、今週、今年……と目先のことにのみ気を取られがちですが、それより十年先のことの方が大事なのです。それを想像して、自分たちで企業を作り上げていくことが必要です。
そして重要なのが目標を持つこと。スポーツ選手がオリンピックや国体などの目標を目指して練習に励むのと同じです。そもそも事業はスポーツと同じ。すべからくナンバーワンに、それも世界でのナンバーワンになろうと思わないと、だめなのです。特に小売業は勝負のテリトリーを自分の地域と決めてしまいがちですが、それではもったいない。日本、そして世界でナンバーワンになるという目標を持つことが大切です。
結果が経営者の評価。成績表は貸借対照表と損益計算書
また事業は一人でするものではありません。経営者である自分の欠点、不足を補ってくれる人が必要になります。自分一人で何もかもしようとするのでなく、経営のチームを作ることです。それも一億円のビジネスをするチームと十兆円のビジネスをするチームとでは、まるで違うもの。そのチームも含めて、経営者は社員をすべて自分のパートナーだと考えるべきです。社員を自分の手足と考えると、決してうまくはいきません。
そして、もうひとつ大事なのは結果を出すことです。経営者として評価をされるのは、他の何でもなく結果を出すこと。経営者の成績表は貸借対照表であり、損益計算書です。僕が見るところ、たとえばセミナーなどに参加して勉強する経営者は多いようですが、実行する人は少ないのではないでしょうか。物事に精通することも大切ですが、おかしいこと、矛盾することにも気づかなければだめです。理想派の経営者は多いようですが、理想ばかりで現実はほとんど知らないというのは、僕は違うと思うのです。
ファーストリテイリングは零細企業からスタートして、僕もお金の苦労をしてきました。言うまでもないことだと思われるかもしれませんが、経営者というものは、お金を大事にしなくてはいけないのです。でも若くして成功した経営者は金銭感覚がどうも僕達と違うように思えてなりません。
そもそも事業というものはローコスト経営をしないと、ほとんどが失敗します。逆に言えば、ローコスト経営は失敗が可能だということです。特に小売業は利益率が低いもの。ファーストリテイリングは「大企業の系列は嫌だ」「銀行の子会社は嫌だ」という気持ちでやってきましたから、古いかもしれませんが、キャッシュは大切なものでした。だから、お金を大事にしてきたのです。
僕が経営者として今までやってこられたのは、今お話したようなことを毎日、「ああでもない、こうでもない」と悩みながら、進んできたからだと思います。今、僕はしみじみそう実感しています。そんなふうに自分の力で自分の事業をやろうと考える若いベンチャー経営者が、これからの日本に、どんどん生まれてきてほしいと願っています。
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