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| しまむら 藤原秀次郎会長 |
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衣料品でイトーヨーカ堂をしのぐ売上高を上げ、なお右肩上がりの成長を続けるしまむら。その秘密はどこにあるのか。藤原氏は十五年前、社長に就任した時「会社を大きくしようとは思わなかった」。それよりも「良い会社にしようと思った」という。良い会社とは社員が長期的に満足できる会社である、と語る。
時代と消費者のニーズを見極め変化したことが順調な伸びの秘訣
私は四十九歳から十五年間しまむらの社長を務め、今年、会長に退きました。本日のこの栄えある賞は、その一つの記念と感謝しております。
まず、しまむらの概要と生い立ちをお話させていただきます。今年二月期の売上高は約三千三百億円、営業利益は二百三十六億円です。基本となっているファッションセンターしまむらは現在、九百十五店鋪。どの店鋪もだいたい一〇〇〇~一三〇〇平方メートルです。ターゲットは二十歳から四十五歳の主婦で、日常使う普段着を扱っています。
この他に十五~二十五歳の男女を対象にしたカジュアルエレガンスの「アベイル」が百二十七店鋪。さらに四、五年前から展開しているベビー・子供服の「バースディ」が五十三店鋪、若い女性向けのファッション雑貨「シャンブル」が二十九店鋪です。立地は郊外の新市場をターゲットにしており、北は北海道から南は沖縄の宮古島や石垣島、そして台湾でも「思夢楽」の名で二十七店鋪を展開しています。
しまむらは比較的順調に伸びていますが、これまでには大幅な内容の変化もありました。あまり物がなかった八十年代までは「安いが一番」ということで低価格を目指していましたが、世の中が変わるにつれ、低価格だけではだめだということになったのです。そのため、低価格は当たり前で、さらに品質を重視するようになりました。
ところが、すぐにそれも当たり前になってしまったわけです。そこで九一年頃からはファッション性の向上に力を入れましたが、やがてそれも当たり前のことになっていきます。その頃には消費者のタンスの中はすでに商品でいっぱいになっていたのです。
次に着目したのがトレンドです。流行を取り入れていくということですね。これによっ
て順調に伸びてきたわけです。その時々での、この四つの切り替えがなければ、しまむらの業績は下降線をたどっていったことでしょう。常に時代と消費者のニーズを見極めて、次の波へ、次の波へと乗り移っていったのが効を奏したわけです。
衣料品の販売ランキングを見てみますと、一位が本日の審査委員も務めておられる柳井正さん率いるユニクロ、二位がイオン、三位がしまむら、四位がイトーヨーカ堂。売上高が三千億円を超えているのはベストテンのうち、この四社だけです。その中でもユニクロが前年比一〇九・八%、しまむらが一〇八・六%と、前年比が一〇〇%を超えているのは二社だけです。つまり専門店が伸びて、量販店が落ちているということですね。これが世の中の動きなのです。
会社の基本は人間。社員の長期的な満足を実現する会社を目指してきた
次に、しまむらの基本的な考えをお話いたします。私達は会社を大きくすることは考えてきませんでした。基本的な考えの一つはまず、よい会社を作ること。昨今、会社は株主のものだとも言われますが、私はそうは思いません。社員がいてこそ会社。ですから第一に社員の長期的な満足を実現する会社を作りたいと思ってきました。
次に大切にするのは人の育成です。つまり組織の公平性と大衆性ということです。「人が多いから切る。足りなければ採用する」という考え方もあるかもしれません。でも物はそうでしょうが、人間は違います。会社の基本はやはり人間なのです。そこで、しまむらでは中途採用をやめ、新卒大卒採用に力を入れてきました。社員を養成するための一番の方法としては、ポストの回転を早くすることに務めています。特殊性は持たせず、基本三年で、ぐるぐるポストを回転させるのです。だからバイヤーが経理に異動することもあるし、経理部からバイヤーになることもあります。そうして育てた人材がそろっていることが我が社の強みだと思っています。
また創業家とバックボーンという点では、アイデンティティと独立性の明確化を大切にしています。私は二代目社長ですが、創業者と血縁関係はありません。でも会社が大きくなった時には、しっかりしたバックボーンがないと危ないのです。そこで創業者の系図の方を集めて、「バックボーンをきちんとします。世間より少しだけいい生活をするのはいいが、それ以上はだめです」というお話をしました。一つの家系がうまくいくためには、自分のアイデンティティや独立性がないとだめなのです。
さらにビジネスネットワークの上での共生化ということがあります。つまり同一の条件で発展するということです。取引のネットワーク上では自分だけが儲けるのはだめで、末端の取引先まで、ほぼ同じく利益を享受することが大事。こうしたことも最初は「口だけだろう」と言われましたが、そのうちわかっていただけました。台湾でのビジネスでも最初は信じてもらえませんでしたね。でもビジネスをするには自分だけよくてはいけません。それが百メートルの短距離競争なら、まあいいでしょうが、長距離走であれば特に、みんながよくならないとだめなのです。
基本フレームは必ず社内で行う それが社員を育てる企業本来の姿
次に会社の運営についての考え方をお話することにしましょう。まず、しまむらでは、グランドデザインはアウトソーシングせず、社内で行なっています。会社のアウトラインというものは、いわば一つの絵であり彫刻。だから外へ出すことはありえない。そこで社内で行うのです。絵にしても彫刻にしても基本フレームは自分しかわからないし、人には任せられないもの。だから基本フレームは自分で考えるわけです。それにつけ加える味や色は外部でも可でしょう。この基本がないと社員が育ちません。それが企業というものなのです。
また責任の明確化というものもあります。ビジネスというものはリスクマネージメント。商品の取引が膨大にある小売業は比較的いい立場で、大事にしてもらえるという状況があるため、横暴になりがちです。でも、しまむらではそれを許さないので、「珍しい」と言われますね。例えば洋服を一万枚発注した場合、例え売れなくても返すことはしません。小売業がそのように責任を持てば一番リスクが少ないし、価格も安くできます。だから自分達が徹底的にリスクを取るようにしているのです。
また日本的な公平性も大切です。つまり全体の最適と妥当性ということですね。海外がよく見えて、自分を下に考えるというのはいけません。だから自分を基準にして日本的経営を行います。すべてが対等で、できるだけ両方に妥当にやろうというスタイルです。
さらに、しまむらでは同質競争はしません。それよりも「もっといい方法はないか?」と次元を変えることにしています。次元を変えたり、方向を変えたりすると、物の見方が変わります。つまり「自分達は違うことをやっていく」ということですね。以上のような基本的な考え方や会社運営によって、しまむらは右肩上がりで順調に伸びてきたのだと思っています。
そして今年、私は次の社長にバトンタッチをしました。会長に引いて以後の役割分担についてよく聞かれますが、分担はせず、全部を引き継ぎます。十五年間社長を務めましたが、今、滑走路には新社長という次の飛行機が入ってきました。飛び立つまでは後ろで見守りますが、離陸したらパイロットにすべてを任せます。新しい社長と私も血縁関係はありませんが、企業経営に血縁はあってもなくてもいい。互いの企業観が合っていればいいのです。新社長にも、私のそうした思いを引き継いで、経営をしていってほしいと願っています。 |