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ライドオンエクスプレス 社長 江見 朗

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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コロナ禍を宅配食で楽しく・豊かに

コロナ禍を宅配食で楽しく・豊かに

 宅配寿司「銀のさら」や宅配御膳「釜寅」で知られるライドオンエクスプレス。コロナ禍で巣ごもり生活が強いられる今、その業績は絶好調だ。主力の宅配寿司ではシェア55%とダントツ1 位を誇る。連結売上高247 億円(前期比17.6%増2021年3月期見込)、経常利益21.9億円(前期比66.8% 増(同)と驚異の利益をたたき出す。社長の江見朗は「ご家庭での生活をもっと美味しくもっと便利に」を掲げ、デリバリー食の覇者としてさらなる進化に挑む。(文中敬称略)  

宅配寿司といえば「銀のさら」
 
 コロナに見舞われ巣ごもり生活を余儀なくされた2020年。宅配寿司「銀のさら」は、家庭でのごちそうの代名詞としてさらなる拡大を実現していた。外食業界が時短営業を強いられ、苦戦する中、一人気を吐くのは、ライドオンエクスプレスである。主力の宅配寿司「銀のさら」は、シェア55%と、向かうところ敵なしだ。
 過去にはいくつかあったが、今は宅配寿司といえば「銀のさら」だ。ネタの品質、大きさ、シャリの美味しさ、すべてのクオリティでこれに匹敵するものは見当たらない。寿司好きな国民を納得させる味、品質だからこその一人勝ちである。「銀のさら」の寿司が自粛生活に疲れた人々に、どれだけの幸せな時間を提供していることか。
 外食市場約25兆円の中で、寿司全体の市場は1兆7000億円。その中で宅配寿司の市場は570億円程度。その55%の市場を握るのがライドオンである。「宅配寿司では当社が断トツのトップ、敵はいない」と、社長の江見朗は鼻息が荒い。「宅配寿司市場はまだまだ小さい。従って伸びしろは大きい。外出自粛の今は絶好のチャンス」とアクセルを踏む。
 宅配寿司「銀のさら」を筆頭に、釜めしの「釜寅」や、値ごろ感のある「すし上等!」など、宅配専門店をFC 展開、各ブランドを併せた総店舗数は約740店舗を誇る。

20年間蓄積してきた強み

 好調な業績を維持している要因の一つは、「銀のさら」を核として、1拠点に複数のブランドを集約する「複合化戦略」にある。一つの店舗に「銀のさら」と「釜寅」が同居している。これにより店舗効率を上げ、1店舗の売上げ、利益の拡大を実現している。
 サンドイッチ店からスタートした江見は、寿司店に業態変換、2001年には当時FC開発コンサルタントとして躍進していたベンチャー・リンクと業務提携。「銀のさら」のFC 展開を加速した。1年で200店舗出店という途方もない計画をやり遂げたのは、ベンチャー・リンクのノウハウがあったからだ。
 もともと宅配事業のため、出店立地を問わないことが、出店加速を実現している。駅から離れた住宅地、路地裏でもオーケーだ。
 「銀のさら」の強みは、寿司ネタの鮮度。大きさなど、お寿司そのものの品質の良さはいうまでもない。実際、各店舗には特殊な解凍器を導入、鮮度と美味しさを保ったマグロを武器に、一気に拡大してきた。「銀のさら」はマグロが美味しいのが自慢である。日本人にとってマグロは特別だ。
 ラストワンマイルが宅配の命と言われるが、この即時配送システムを自社で構築しているのは、同社の大きな強みとなっている。GPSで配達員を管理、データを解析、最適なルート選択など、素早く効率よく配達する工夫に余念がない。

ウーバーイーツは仲間

 宅配代行サービスの「ファインダイン」事業にも力が入る。これは宅配機能を持たない提携レストランの料理をデリバリーするというサービスだ。お客にとって. 地元の人気店の料理を、家に居ながらにして味わえるのはありがたい。
 最近宅配代行事業である「ウーバーイーツ」を見かけることが多くなった。「彼らは共に市場を拡大する仲間」と江見。ウーバーイーツは不特定多数が配達人となるが、ファインダインは自社グループで育てた配達員がお届けする。
 約5年前日本に上陸、業績はマイナスでも何かと話題にのぼるウーバーは気になる存在だ。しかしコロナ禍で宅配代行が進む中、ウーバーイーツも出前館も赤字から脱却できていない。
 自社で配送網を持ち、最初から宅配専門でノウハウを積み上げてきた同社の業績が絶好調なのもうなずける。
 
勝ち組として

 「怒らない経営」こそが最も合理的と、怒らない経営を貫いている江見。FC 展開のノウハウも蓄積しているが、その加盟店の心を繋いたのは、江見が実践する「怒らない経営」である。
 実際、ライドオンには明るく元気、自由闊達な風土が息づいている。毎年実施される「エクスプレスフォーラム」では、各エリアから選ばれたスタッフが参加。正確で美しい寿司づくりや事例発表など、さまざまなテーマで成果が発表され、同社のモチベーションアップ、業績アップへと繋げている。
 ライドオンがこの20年間蓄積してきた、データ、ノウハウは大きい。チラシひとつとっても、写真の撮影、見せ方、出来上がったチラシの投函の仕方にも細かいノウハウがある。何曜日のどの時間に投函すればオーダーにつながるか予測できるのだ。ネット配信ももちろんだ。どの時間帯に配信すれば、チェックし、オーダーにつながるか、膨大なデータを蓄積する同社はアドバンテージが高い。宅配食の圧倒的な勝ち組としてさらなる進化を目指す。
 今後はテイクアウトを併設したロードサイド店の展開や新業態も視野に入れている。コロナ禍で外出自粛という追い風をどう生かすのか。ラストワンマイル物流を自社で構築、バイク数千台が実働していることは最大の武器となっている。
 完全自動運転が可能になれば、外食25兆円の半分がデリバリー食になるといわれている。それがいつかは不明だが、莫大な市場が見えている。ここをどう攻めていくのか。同社の急成長が楽しみだ。

(企業家倶楽部2021年3月号掲載)

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