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【私のターニングポイント】ユニメディア社長末田真

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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組織改革で危機突破

組織改革で危機突破

(企業家倶楽部2019年2月号掲載)

 弊社はスマートフォン向けの広告販売や、そのマーケティングを含めたコンサルティング、またメディア開発・運用などを幅広く手掛けるIT企業です。2016年度の売上高は約100億円となりましたが、実はつい3~4年前までは売上げ10億円台前半で踊り場を迎えていました。

 弊社はもとよりモバイル向けのサービスを展開する企業でした。従来型のいわゆる「ガラケー」市場で商売をしていたわけですが、09年頃からiPhoneが普及し始めると、一気にスマホへのシフトが起こりました。ただ、ガラケー市場が縮小する一方、スマホ市場もアプリなどのビジネスが出てくるにはまだ時間がかかるという状態。この過渡期にあって、モバイル上のコンテンツや広告に携わっていた弊社のビジネスはごっそり消滅してしまったのです。

 その過程でリストラも経験しました。70名いた社員は半分に減少。もちろん、単に人数だけ減らしたわけではありません。それと並行して、段階的に組織改革も行いました。

 弊社は元々事業部制を敷いており、20~30人の大きな組織を3つ作って取りまとめていました。それを8つ程の小さな組織に分け、それぞれ3人から多くとも10人という人員で、事業計画から意思決定まで行わせるユニット制へと移行したのです。事業部制の時代は、経験のある中途採用の社員が上に立ち、新卒出身の生え抜き社員を率いる形でしたが、ユニット制へと移す過程で生え抜き社員と中途社員を半数ずつ責任者とし、フラットな組織に構造を変えました。

 これには中途社員から相当な反発がありました。これまで部下だった人間が、突然同列に並ぶわけですから、ある程度の軋轢が生じるのは仕方ありません。しかし、結果的にモバイル市場がスマホ主体へと変わっていく中で、金脈を掘り当てたのはむしろ生え抜き社員の作った事業でした。

 インターネットのビジネスは変化がとにかく早いので、最先端の技術も1~2年で陳腐化しますし、現在の稼ぎ頭となっている事業が5年後も同じ位置にいるかと言うと疑問です。従来の業界であれば、ノウハウを蓄積した先輩が先行し、それを後輩が学んで受け継ぐというスタイルが可能でしたが、従来のモデルが簡単に覆されてしまう可能性を考えると、この業界にピラミッド型の階層組織は向いていません。現場が一定の裁量を持ち、仮説・検証を繰り返しながらビジネスモデルを創っていかなければならないのです。そのためには、フラットで機動的な組織の構築が一番大事。危機に当たってそれが出来たことで、その後の急成長に繋がったと考えています。

 さて、事業の意思決定は可能な限り現場で行った方が良いでしょう。しかし、若手には未熟な側面もあります。彼らは元気に走り回れますが、賢い走り方を知る必要もあるのです。そこで私たちは社外から重鎮を招くことで、その役割を担っていただいております。モバイルのコンテンツ業界に詳しい方、広告業界に知見を持たれている方などなど。そうした重鎮たちからいつでも支援をいただけるような環境を作っているのです。

 私たちが4~5年前に進めたのは、機能別の事業部制からフラットなユニット制への移行でした。そして現在はユニット経営から連結子会社経営へ向かおうとしています。今後、ユニット制で出てきた事業が大きくなれば、そのまま子会社となるケースも間違いなく出てくる。そうなった時、母体となるユニメディアグループの下にユニット発の連結子会社が立ち並ぶ体制となっていくでしょう。そう考えると、今もまたターニングポイントと言えるかもしれません。

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