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【核心インタビュー】パーク24 代表取締役社長  西川光一 氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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快適クルマ社会の実現に全力投球

快適クルマ社会の実現に全力投球

(企業家倶楽部2016年6月号掲載)

駐車場ビジネスナンバーワンのパーク24が好調だ。2015年10月期の売上高1796億円、経常利益185億円と右肩上がりに成長。黄色の看板でお馴染みの駐車場「タイムズ」は50 万台を超え、第二の柱に育ったカーシェアリングも1万4000 台に拡充、新時代のサービスを加速する。快適クルマ社会の実現に挑む西川光一社長に、次なる戦略を聞いた。(聞き手は本誌副編集長 三浦貴保)

問 業績が絶好調ですが、その理由はどこにあるのでしょうか。

西川 一番の理由は、駐車場の需給ギャップが大きいためです。街中で路上駐車を多く見かけることからも分かる通り、駐車場が全く足りていません。供給できているのはまだ4割ぐらいだと思います。

問 まだ伸びしろが大きいということですね。

西川 当社だけで約50万台の駐車場を作ってきましたが、焼け石に水で、需要には全く足りていません。

問 そもそも、日本のクルマの台数はどのくらいあるのでしょうか。

西川 登録台数は7000万台を超えていますが、トラックやバスを除くと約5000万台です。伸びしろが大きく、開発余地がまだあるので、400名の営業マンが売り込みをかけています。

問 以前、御社の強みは足で稼ぐ営業力と言っておられましたが、路地裏の小さい場所にも開発の余地はあるのでしょうか。

西川 実は、駐車台数一桁の駐車場の方が開発の余地は大きいです。大体100坪以下ですが、この大きさの土地は個人の所有者が多い。法人所有の土地は3?5年で解約されてしまうという潜在的なリスクがありますが、個人の土地ならばより長く、5年や10年借りることができます。

問 駐車台数としては、年間どのぐらい増えているのですか。

西川 4~5万台というところです。

問 御社の強さが目立ちますが、ライバルはいないのですか。

西川 同業他社はいますが、ライバル意識を感じているところはないですね。規模感が違います。

問 なるほど、ライバルにならないということですね。ITの導入も強みの一つだと思います。

西川 これだけの規模の駐車場を日々安定的に動かすには、ITシステムが必須です。このシステムが無ければ、今のようなペースで拡大することはできなかったでしょう。

問 システムを構築して13年、現状でできているサービスを具体的に教えてください。

西川 特別なことではありませんが、他のビジネスで当たり前のように使えるクレジットカードや電子マネーの決済、そしてポイントサービスをご利用いただけます。

問 これだけの数の駐車場がスムーズに動いているのは画期的ですね。

西川 シンプルなシステムですが、2003年の導入当初に将来の規模感を見越し、余裕を持って作ったことが良かったのでしょう。仮に、今すぐ2倍の100万台となっても、システム自体は耐えられますし、このシステムがあったからこそカーシェアリングなども導入できました。

カーシェアリングが第二の柱に

問 カーシェアリングの業績はいかがですか。

西川 前期の営業利益は12億円で、今期の計画では24億円となる見込みです。

問 倍増ですね。場所も台数も増えているということですか。

西川 規模が拡大しており、全体的な稼動率も上がっています。

問 台数はどのくらいあるのでしょうか。

西川 現在は約1万4000台で、今年の10月末までに1万6000台とする計画です。

問 どんな年代の方が活用しているのですか。

西川 20代、30代で全体の55%くらい。4分の1が女性で4分の3が男性。3分の1が法人で3分の2が個人です。平日の稼動数を上げるために、今は法人会員を増やしています。

問 若い方が短時間乗るには便利ですね。

西川 個人で20代、30代の方はクルマを持っていない方が多い。ただ、自家用車をお持ちの会員も10%います。車種も32種類揃えていますので、その中に自分の欲しいクルマがあれば、会員になって納得するまで乗り、そのクルマを購入されて退会する方もいます。

問 クルマを持たない若者が多くなり、クルマ社会が変わってきていると思いますが、乗りたいという意識はあるのですね。

西川 意識としては40代、50代と変わりません。経済的な負担が大きいためにクルマを持てないだけで、クルマが嫌いなわけでは決してない。

問 カーシェアリングを上手に活用しているということですね。

西川 利用時間は平均3時間前後が一番多くなっております。

問 タイムズ駐車場で、カーシェアリングを併設している割合はどの程度でしょうか。

西川 約半分ですから、二箇所に一箇所はカーシェアリングの車が置いてある計算になります。

問 将来的にはどのくらいまで増やしていこうと考えておられますか。

西川 2020年の東京オリンピックまでに3万台を目指したいですね。

問 カーシェアリングで御社がいち早く黒字化できた強みはどこにありますか。

西川 何といっても駐車場のコストがゼロということですね。既に駐車場がありましたので、一気に展開できました。

シェアするライフスタイルが当たり前に

問 元々駐車場をお持ちですから、そこは大きな強みですね。今の若い人は持たないでシェアする暮らしが当たり前になりつつあると思いますが、どのようにお考えですか。

西川 今の若い人は占有にあまりこだわらない。共有への抵抗感が少ないのでしょう。家もシェアハウスで、他人と一緒に住んでも大丈夫。無理してワンルームの狭い場所に住むよりも、5人くらいで一軒家を借りて、快適に住んだ方が良いというわけですから、ある意味すごくドライで合理的ですね。

問 シェアに抵抗が無いのはどの年代からですか。

西川 40代になると占有に対する意識が強いですね。私自身、シェアハウスには抵抗があります。

問 ちなみに社長はおいくつですか。

西川 今年で52歳です。カーシェアリングでも、自分のクルマを使わない時間帯に会員に開放して収入を得るという業態が出てきています。私は自分のクルマを他人に貸すのは嫌ですから、自分が理解出来ないことをビジネスにはしません。最近は自家用車用の駐車場も、空いている時間だけを貸すという形態が増えてきています。事業者がサービスとして提供する業態から、個人が提供する動きが出始めているのです。

問 インターネット時代だとあり得ますね。まさにエコな暮らし、合理的な暮らしということになるのでしょうか。

西川 いずれにせよ、共有に対するハードルは随分下がりましたね。

問 こうした時代では、かなりのスピードでカーシェアリングが進む気がします。

西川 当社では、カーシェアリングは新しい交通手段と捉えています。15分単位で利用できますから便利です。

問 少しの時間でも使えるという点では、レンタカーよりカーシェアリングがサービスとして便利ですね。ただ、乗り捨ては難しいのですか。

西川 全てのタイムズ駐車場で乗り捨てを可能とするのは、物理的にもコスト的にも難しいですが、ごく一部で展開しています。ただ、将来的には全てのカーシェアリングのクルマが乗り捨てられるようにしなければなりません。

新サービスで快適さを提供

問 新しいサービスも始めているのですか。

西川 実験的に「銀座バレットサービス」を始めています。銀座エリア限定ですが、お客様に指定する場所で車を預けていただき、帰る時にはご指定の場所まで届けるというサービスです。

問 まるで自分に秘書が付いているような感覚ですね。いつスタートされたのですか。

西川 2月末から始めましたが、タイムズの会員限定にしているので反響はぼちぼちです。

問 人件費が高くつくのではないですか。

西川 1回あたり3時間3000円ですから、1人の係員が3台担当すると人件費が出ます。需要がどこまであるのか分かりませんので、まずはトライアルです。

問 多くの駐車場を持っているからこそ出来るサービスですね。他に面白いサービスはありますか。

西川 クルマを移動手段としてだけでなく、「そのクルマに乗ること自体が楽しみ」とか、「あのクルマに乗りたかった」というような楽しみを40代、50代の世代に訴えたいのと、若い人たちにも同様に感じて欲しいと思い、レンタカー会社で古いクルマやスーパーカーブームの時代に流行ったポルシェターボなどを貸し出しています。昔のフェアレディZとか、二人乗りのスーパーセブンなど、様々取り揃えています。

問 クルマはある意味あこがれですよね。乗りたかったクルマが借りられるというのは、夢のようでしょう。ところで、日本のクルマ社会は今後どうなると思われますか。

西川 最近は自動運転が持てはやされていますが、現実的にはもう少し時間がかかるのではないかと見ています。とても2、3年で普及するとは思えませんし、自動運転のクルマとドライバーが運転するクルマが混在すると、事故の削減にはならないと思います。

問 自動運転車が普及すると、駐車場は便利になるのでしょうか。

西川 何も変わりません。駐車場はインフラなので、クルマの形態や動きがどう変わろうと必要になります。

問 今後の展望、目標をお聞かせください。

西川 長期的には今の2倍にあたる100万台まで駐車場を拡大したいと思っています。カーシェアリングとレンタカーの両方でモビリティ事業としていますが、モビリティでは10万台を目指します。10年以内には達成したいですね。

問 快適なクルマ社会の実現という目標を掲げておられますね。

西川 クルマは移動手段ですから、他の公共交通機関とのスムーズな連携が必要です。今は駅前に積極的にカーシェアリングのクルマを設置し、利便性に貢献したいと思っています。


P R O F I L E

西川 光一 (にしかわ・こういち)

1964年東京生まれ。89年株式会社アマダ入社、93年11月パーク24に入社し情報開発部長に就任。94 年1月取締役、98 年1月常務取締役、00年11 月タイムズサービス株式会社代表取締役、04 年1月パーク24代表取締役社長に就任、現在に至る。

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