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【第21回企業家賞】企業家賞審査員長 ジャパネットたかた創業者 髙田 明

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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髙田明審査員長による講評 一生懸命「今」を生きる

髙田明審査員長による講評 一生懸命「今」を生きる

(企業家倶楽部2019年10月号掲載)

 

法螺は英語でビジョン

 受賞者の皆様、本日はおめでとうございます。

 今回は受賞した企業家が8名おりますが、どの方のお話を聞いていても思いますのは、皆さんが夢を持っていらっしゃるということです。そしてその夢が全て、自分自身の小さな欲望や売上げではなく、「人生の中でどれだけ人の役に立ち、人の幸せに寄与するか」ということにつながっていると感じました。

 昨年の第20回企業家賞では、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「企業家レジェンド大賞」を受賞され、登壇されました。その時に行われた孫さんのスピーチで、非常に印象に残っている言葉があります。

 孫さんは「世の中では私のことを、大法螺を吹く男だという人がいます」と前置きをされた後、「ところで、大法螺とは英語で何と言うかご存知ですか」と会場に問いかけられました。

 皆さんはご存知ですか。孫さんは「大法螺を英語にすると、ビジョンになる」と言われたのです。

100年企業を作り人々を幸せにしてほしい

 企業家賞を受賞された方々は、まさしくこの「ビジョン」を持っていらっしゃる。今回も、これに感銘を受けました。

 今年で企業家賞も21周年を迎えるわけですが、企業家賞を受賞された皆さんは、本当に長く世の中の役に立ち続けている会社を作られている方が多い。これは企業家賞の一つの特徴だと思います。

 昨今、IT技術の進化やグローバル化によって、世の中の変化は非常に早くなっています。私もジャパネットたかたで社長を務めていた折、今日売れた商品が明日売れるとは限らないことを痛感してまいりました。ダーウィンの進化論にも「生き残るのは強い者ではない。変化に適応できる者である」との言葉があります。

 これを受けて、今日は皆様にお願いがございます。人生100年時代を迎える中、是非とも世の中の流れの早さに負けず、100年、200年と続く企業を作っていただき、多くの人々を幸せにしていただければと思います。

 

企業家が世の中の仕組みを変える

 アイリスオーヤマの大山健太郎会長は、本当にパワフルな経営をされています。ご講演の中に登場した中国・大連の工場には、私も伺いました。皆様も機会がありましたら、一度行ってみてください。最高の工場で、その仕組みには驚かされること請け合いです。ご縁があって、ジャパネットたかたでも家電などでお世話になっていますが、家電は日本製品が今でも世界一だと思っています。

 ただ、確かに現状として海外勢に押されているのは否めません。それはやはり、大山会長のように「ピンチをチャンスと捉える」という気概が少し萎んでいるからでしょう。その点、私は大山会長を本当に尊敬しております。私自身が117歳まで生きると決めておりますから、大山会長にも100歳まで頑張っていただき、家電を通して世界を幸せにしていただきたいと思います。

 続いて、ニチイ学館の寺田明彦会長。私は今日、寺田会長にお会いできて良かったです。私も現在70歳ですから、47年後にはお世話になろうと思いますので、こうしたご縁をいただけたことに感謝致します。

 医療や介護は本当に大変なお仕事だと思いますが、日本は最も高齢化を迎えている国ですから、ニーズは間違いありません。そればかりか、今後は日本の10倍の人口を抱える中国が高齢化社会になっていくことを考えると、ニチイ学館の技術、人材の指導力が世界のために役立つでしょう。是非とも世界に飛び出していただきたいと思います。

 コシダカホールディングスの腰髙博社長はカラオケ事業を展開されていますね。実は私も、ジャパネットたかた時代にはカラオケを随分売ってきました。私がカラオケで歌っている時に思ったのは、いかに声を出すことにつながるか。そしてこの「声を出す」ということが、健康にとって良いのです。

 コシダカホールディングスの展開するカラオケ店「まねきねこ」は、ジャパネットたかた佐世保本社の目と鼻の先にありまして、しょっちゅう伺っています。今後ともよろしくお願いします。

 また、カラオケと合わせて、カーブスという女性のためのフィットネスクラブも全国に2000店舗FC展開されて企業家賞 The 21 th Kigyoka prize winning enterpriseいますね。女性の方はカーブスに加入していただくと、健康増進につながるでしょう。腰髙社長はアイデア一つで逆風をチャンスに変えておられ、まさしく代表的な企業家だと思います。

 SHIFTの丹下大社長はソフトウェアのテスト事業を手掛けられています。私はこの分野はあまり得意ではありませんが、ソフトウェア品質保証の潜在市場が5兆円あると聞いて驚きました。現時点で外注されているソフトウェアテストが500億円分ある中で、180億円のシェアを取られているという実績は大変なものです。今後も有力な企業として成長されていくことでしょう。

 サインポストの蒲原寧社長は無人A I レジを作られています。現在は人手不足で大変な状況ですので、ますますの社会貢献が期待できるでしょう。また、先ほどお話を伺ったところ、サッカーチーム「大分トリニータ」に関わっていらっしゃるとのこと。私も同じくサッカーチーム「V・ファーレン長崎」の社長をしていますので、これをご縁に色んなお話をさせていただければ幸いです。将来の展望を楽しみにしております。

 続いてHEROZの林隆弘、高橋知裕両代表ですが、仲が良いほど共同代表による企業経営は難しいと言われる中で、お二人には非常にパワーを感じます。お互いに相乗効果を出し合って世界を変えていくことでしょう。実は現在、私の孫も将棋を一生懸命練習しておりまして、馴染みを感じます。さらに、将棋アプリに止まらず、AIを駆使してB2B領域にも進出されているとのこと、期待しております。

 最後にアクセルスペースの中村友哉代表。超小型の人工衛星を作り、地球を観測されています。私は宇宙のことは詳しくありませんが、非常に興味を持っています。宇宙空間には生命の起源といった未知なる世界が広がっていますからね。そうした宇宙を活用したビジネスを展開するベンチャー企業が出てくるとは、世の中もかなり変わってきたと実感しております。

 今後も、企業家の方々の新しい発想で、世の中の仕組みがどんどん変わっていくことと思い、非常に楽しみです。



多くの力が合わさって目標を達成できる

 皆さん、夢を持ち続けて精進してほしいと思います。この授賞式に参加して下さった方々とのご縁をつないでいくのが企業家倶楽部です。自分一人で世の中が成り立っているわけではありません。沢山の方とつながりながら、その方々と力を合わせて目標を達成していただきたいですね。

 今回の受賞者の皆様も、一生懸命「今」という瞬間を生きていらっしゃる方ばかりでした。私は「今を生きる」という言葉がすごく好きで、今を生きている人には必ず同じ価値を持った仲間が集まってくると信じています。

 皆様もこのご縁を大切にし、どんどんご活用いただいて、益々発展されていくことを切に願います。今日は本当におめでとうございました。

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