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【私の宝箱】日本ハウスホールディングス・グループCEO兼代表取締役会長 成田和幸

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

人生を共に刻んできた腕時計

人生を共に刻んできた腕時計

 「私が大切にしているものといえば、人生の節目、節目で買い求めた腕時計です」マホガニーのケースを手に抱え、満面の笑みを浮かべて現れた成田和幸会長。ケースの中には、オメガ、ウブロ、ブルガリ、タグ・ホイヤーなど、腕時計好きにとっては垂涎の高級腕時計が収まっている。これらは一つひとつが成田会長の輝かしい人生を彩ってきた貴重な逸品だ。
 
 最初に手にしたのは入社2年目23歳のときだ。営業成績で新人賞を獲得、ご褒美として参加したヨーロッパ旅行で、記念に買い求めたダンヒルである。当時は東日本ハウス創業10年目で、戸建て注文住宅販売ベンチャーとして頭角を現してきたころだ。
  
 営業成績全国1位を獲得、シンガポール旅行に参加したときに記念に買ったオメガの時計。函館支店長に就任したときに父親にプレゼントした時計。社長就任の記念に購入した時計。2年前社長を交代、会長に就任した記念に買い求めた時計など、どれもが人生の節目に、記念として手に入れたものだ。中には高級外車が買えるほどの高価なものもある。

 もともと腕時計好きという成田会長、会長就任の記念として日本に3個しかない限定品のウブロにエントリーしたが、残念ながら手にすることはできなかったという。

 数ある中で一番心に残る腕時計は、社員たちからプレゼントされた逸品だ。36歳で函館支店長に就任、2年目にして全国売り上げ2位を獲得。40名社員全員で、ご褒美としてハワイ旅行に行った時のことだ。

 「支店長のおかけで頑張れました。ありがとうございます」と、腕時計をプレゼントしてくれたのだ。30年ほど前のことだが、その時の感動は今でも忘れない。大切な宝箱の中で、一番輝きを放つのがこの時のロンジンなのだという。

 情に厚く面倒見がよくて、男気がある成田会長と、社員一人ひとり、そして関連業者との熱い信頼関係が、同社成長の原動力となっている。2015年、社名を日本ハウスホールディングスに変更、木造注文住宅販売の雄として、成長を続けている。その強烈なリーダーとして敏腕をふるってきた成田会長にとって、これらの腕時計は苦楽を共に戦ってきた相棒であり、男のロマンなのである。

 コロナ禍ではあるが、高級な檜の家を得意とする同社は、落ち込みが少ないという。むしろ「コロナこそチャンス」と成長の手綱を緩めることはない。今、ホテル業界が苦しんでいるが、箱根の芦ノ湖と仙石原に2つの高級ホテルを建設中だ。芦ノ湖は2022年2月、仙石原は2023年2月に開業予定という。さらに3ヶ所程度、いずれも首都圏から200キロ圏内での計画を進めている。コロナ収束後は多くのお客の心身を癒すことだろう。

 680億円という途方もない負債を背負っての社長就任から約20年、持ち前の才覚とガッツで成長を掴みとってきた成田会長。「私は強運の男」と胸をたたく。しかしそこにはどれだけの苦難があったことか。その一秒一秒を刻み、共に歩んできた腕時計は、これからも新たな栄光の時を刻んでいくことであろう。

(初掲載 企業家倶楽部2021年5月号)

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