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【オフィス訪問】サマンサタバサジャパンリミテッド 代表取締役社長 寺田和正

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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原点進化でベンチャースピリッツに火をつけたい

原点進化でベンチャースピリッツに火をつけたい

(企業家倶楽部2018年12月号掲載)

若い女性に圧倒的人気のブランドとして名高いサマンサタバサ。2017年、長年住み慣れた青山から麻布十番に移転、第3の創業期として心機一転を図る。カンパニー制を導入、社員のベンチャースピリッツに火をつけたいと意気込む寺田和正社長にその真意を伺った。

       
日本一楽しい会社を体現

問 ここに移転した目的と理由をお聞かせ下さい。

寺田 第3の創業期ということです。手狭になった青山から移転しました。ファッションの街として六本木や青山、渋谷も検討しましたが、何といってもこのビルのクオリティーに惹かれました。外観の「ギザギザビル」が有名ですが、10階のフロアを確保できたこと、天井が高く、無柱空間なので使い勝手が良いこと、防災の設備がしっかりしていることが決め手です。

問 第3の創業ということですが、新しいオフィスづくりのコンセプトは。

寺田 もう一度ベンチャースピリッツに火をつけるということと、日本一楽しい会社を体現できるようなオフィスにしたいということです。

問 そのコンセプトが至るところに表現されているわけですね。

寺田 IT系の会社はより進んだオフィスを作られていますが、アパレルでは珍しい空間だと思います。

問 移られて1年半ですが、居心地はいかがですか。

寺田 断然良いですね。以前と違って朝礼も全員座ってできるようになり、個々の顔が見られるので、良いスタートを切れるようになりました。

問 このビルには何人いるのですか。

寺田 350人です。

問 その人数が全員入るのですから広いですね。ショールームもオシャレで、まるでお店のようです。

寺田 今はブランドごとに分けてディスプレイしていますが、全部カセット式になっていて動かせるので、ここでファッションショーもできます。

問 カフェは広くて色んなコーナーがあり楽しいですね。特に寿司カウンターはよくテレビで放映されています。

寺田 この寿司カウンターは僕が全部デザインしました。

問 社内にお寿司のカウンターなんて贅沢です。寺田社長はお寿司がお好きなんですか。

寺田 僕自身が寿司好きなのと、特に外国のお客様はお寿司が好きなので喜ばれます。

問 社員の誕生日会などに活用されているとか。

寺田 毎月1回開いています。

問 皆さん幸せですね。

寺田 今年2月から、1500人面談といって、販売スタッフ全員と面談を行っています。

問 それはすごい。1対1ではないですよね。

寺田 12対1や13対1で、一日50人ずつ行いますが、1人にかける時間は30分ぐらいです。面談の後は皆でお寿司を食べて、パーティーを開いてゲームをやって、バーで飲んで、最後はカラオケを楽しみます。


問 それを全部同じフロアでできるのはすごい。社長と直に話ができるので皆さん喜びますね。ここは色んなコーナーがあり楽しいと思います。

寺田 全部同じだと面白くないので、少しずつ変えました。テーブル席やバーコーナーでランチを食べる人もいます。

問 ジムまで完備しているとは驚きです。東京タワーを見ながら運動できるのは最高ですね。夜は何時まで利用できるのですか。

寺田 何時でもできますよ。

問 贅沢ですね。社長もこのジムを活用することがあるのですか。

寺田 ときどき活用しています。

生産性が上がった

問 移転して1年半、社員の意識はどのように変化しましたか。

寺田 移転後カンパニー制にしましたので、仲間意識というか、自分の部署以外の人たちとのコミュニケーションが活発になりました。部署を越えて人財部とカンパニーが一緒にランチを食べたり、ミーティングをしたり。

問 これだけ充実した設備を作ってもらって社員の方は幸せですね。カンパニー制を導入して半年ですが、いかがですか。

寺田 生産性が上がりましたし、成果にもこだわってくるので、本当に良くなってきました。

問 カンパニー制だとそれぞれに責任があるので自立しますよね。

寺田 それぞれの経費も分かるようになっています。前は「もっと人が欲しい」と言ってドンドン人が増えていきましたが、カンパニーにしたところ、「うちはもっとコンパクトにしたい」という部署が増えました。

問 人件費が見えてきますから、少ない人数で頑張ろうとするのですね。

寺田 人を少なくするというより、無駄を無くすということです。無駄なのか、将来への投資なのか、見極められるようになってきたと思います。

香港のサマンサタバサ店舗

本当にサマンサが好きな人を採用

問 新卒採用はサマンサタバサグループ全体で行っているのですか。

寺田 そうです。来期入社の方は10月1日に内定式を行いました。原点進化として今年から、北海道から九州まで販売スタッフ全員の面接も行います。

問 社長自らですか。

寺田 はい。今「サマンサ女子」とテレビで取り上げてもらったりしているので、応募はすごく増えましたが、僕の目に適う人間は少ない。

問 求めるのはどんな人材ですか。

寺田 一番大事なことは本当にサマンサが好きかどうか。お客様が我々の商品を好きでなければ買ってもらえないので、我々提供側が本当に好きなのかが大事です。

問 販売員が自分たちの商品を愛しているかどうかは分かりますよね。

寺田 分かります。皆さん、サマンサが好きだと言うし、第一志望だと言いますが、それを見抜けるかですね。

問 社長の重要な仕事です。

寺田 これまでは新卒採用や中途採用に分かれていましたが、今は「人財部」にして社長直轄で僕が見ています。採用人数も辞退する人を予測して何百人か入れていましたが、それは止めました。自分達が「欲しい」と思う人と、「来たい」と思う人をきちんとマッチングさせようとしています。僕らは感動創造接客業なので、明るく元気な声で、笑顔がきちんと出来る人が良いですね。

問 絞り込むと良い人材が採用できる。来年は何人採用の予定ですか。

寺田 70人です。去年は230人でした。従来は辞退する人も含めて採用していた。原点に戻り、本当にサマンサが好きな人に入ってもらいます。

問 バックなどファッション関係の市場はどうですか。

寺田 シュリンクしています。価格も高価格と低価格に二極化している。

問 サマンサとしては今後の戦略をどう考えておられますか。

寺田 我々はとにかく「ワクワク・ドキドキ」を提供します。価格の高い方はいかに付加価値を作っていくかが重要。一方、安い方は「&  chouette(アンドシュエット)」で攻める。

問 海外戦略についてはいかがですか。

寺田 先週台湾に2店舗オープンしました。原点進化として、海外も僕がもう一度力を入れます。

問 アジアが中心となりますか。

寺田 海外は9月末時点で31店ですが、2020年までには欧米に1店舗か2店舗を必ず出したいと思っています。

問 インバウンドが多いですから、サマンサの日本のお店を見てワクワクするのではないですか。

寺田 インバウンド・アウトバウンドをしっかり取り込んでいきます。

化粧品にも進出

問 サマンサのブランドはかなり浸透していますが、今後どの分野に進出したいと思われていますか。

寺田 来年は化粧品を出そうと思っています。

問 良いですね。今までなかったのが不思議なくらいです。

寺田 この数年間は組織作りに力を入れてきました。新しい形の組織が出来たので、もう一度ベンチャースピリッツに戻って、新しいことにチャレンジしたい。その一番の目玉が化粧品です。

問 お洒落に興味のある方がお客様ですからピッタリですね。御社はバッグやジュエリー、アパレルなどを展開していますが、今後伸ばしたいのはどの分野ですか。

寺田 全部ですね。どれもまだまだ伸びしろがあります。

問 課題は何かありますか。

寺田 人、モノ、宣伝、場所、全部課題です。原点に返って、この4つをもう一度磨き直し、進化させていきます。

P r o f i l e 寺田和正(てらだ・かずまさ)

1965年広島県生まれ。91年に独立、海外ブランドの輸入卸業を始める。94 年サマンサタバサジャパンリミテッドを設立、女性向けバッグのオリジナルブランド「サマンサタバサ」を立ち上げる。05 年12月東証マザーズ上場。海外セレブをモデルやデザイナーとして起用し、急成長してきた人気ブランド。08年第10回企業家賞受賞。17年に本社を麻布に移転、カンパニー制を導入。


■本社
東京都港区三田1- 4 -1 住友不動産麻布十番ビル10F

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