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【トップの発信力】vol.3 佐藤綾子のパフォーマンス心理学 

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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無視される政治家・聞かせる政治家

無視される政治家・聞かせる政治家

(企業家倶楽部2011年4月号掲載)

パフォーマンス心理学に、面白い言葉があります。「セイリエンス効果」。簡単に言えば、「何度でも見ているうちに、その人に好感を持つ」という効果です。例えば、新米のセールスマンが一生懸命な顔をして、何度も何度もセールスに来れば、頻繁に視界に入った人に好感を持って、買ってあげたりする心の仕組みです。

 ところが、この「セイリエンス効果」が働くには、実は条件があるのです。例えば、ゴルフの石川遼選手、野球の斎藤佑樹投手、最近のニュースでは、「春高王子」こと柳田将洋主将。テレビに頻繁に映るたびに、より多くの人の好感を集めています。

 逆のケースがこの一年間の仙谷由人大臣の顔です。尖閣列島問題の説明にしても、「皺眉筋」をグッと引き寄せて、眉間に4本の縦皺をたて、下唇の下中央の「オトガイ筋」に力を入れて、結果、下唇の両サイドの下に2本ずつ、はっきりとした意地悪なおじさんのような縦皺が寄ります。いわゆる渋っ面です。

 だから、テレビ視聴者たちは「あ、また仙谷さんだ」と認識したところで、チャンネルを変えてしまいます。政策論以前の聞く人の意欲喪失の問題です。

 このところの菅直人首相もそうです。デビュー当時のパワフルな顔はどこへやら、どんどん表情や声(パフォーマンス心理学での「非言語表現」)の精彩がなくなっています。垂れ下がった「大頬骨筋」、うつむきがちの目線で、年頭記者会見をされても、聞く人に信頼感を与えません。たとえ政策が良くても、話の前に聴き手の目に入ってくる視覚情報が最悪だと、内容説明まで聴き手の注目が持たないわけです。

 逆に最近、私は『小泉進次郎の話す力』(幻冬舎)という本を出しました。そのデータづくりで1年間、徹底的に進次郎氏のビデオ分析をしました。その中で確認できたのが、彼の「セイリエンス効果」です。スタスタと檀に上がり、聴き手の目を見つめながら左右に視線をデリバリーして、メリハリのある声で聴き手中心の呼びかけの言葉から話をスタートします。これで人々はグッと心をつかまれ、「さて、どんな政策が出てくるだろう」となるわけです。聞かせる政治家は政策だけでなく、それを表現する「表現スキル」を持っているのです。

 結局、聞かせる政治家は言語だけでなく、非言語表現で一瞬の「視覚のかみつき(グリンプスバイト)」ができる人、無視される政治家は、それがすべてマイナスイメージの人、ということになります。「見ただけでダメ」と思われたら、もうおしまい。 企業のトップにも、まさに同じことが言えます。「見るからにできそうな人だ」と思わせる「グリンプスバイト」を獲得していきましょう。すると、その人に「何度も会いたい」と人々は思い、それが「セイリエンス効果」に繋がります。


Profile 佐藤綾子

日本大学芸術学部教授。博士(パフォーマンス心理学)。日本におけるパフォーマンス学の創始者であり第一人者。自己表現を意味する「パフォーマンス」の登録商標知的財産権所持者。首相経験者など多くの国会議員や経営トップ、医師の自己表現研修での科学的エビデンスと手法は常に最高の定評あり。上智大学(院)、ニューヨーク大学(院 )卒。連載月刊誌9誌、著書161冊。18年の歴史をもつ自己表現力養成専門の「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰(体験随時)。

連絡先:information@spis.co.jp

詳細:http://spis.co.jp/seminar/

佐藤綾子さんへのご質問はinfo@kigyoka.comまで

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