会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
(企業家倶楽部2010年8月号掲載)
「服装は教養だと思います」
1998年ベストドレッサー発表のステージで受賞者の1人、三國連太郎さんが私との対話の中で語った言葉は、実に新鮮であり衝撃的なものだった。20年以上も選考委員長を務めさせて頂いているが、自分のお洒落について、明確にしかも自信を持って語る三國さんの、そのときの姿を忘れることができない。その後、私の講演の中でもその言葉を使わせて頂いている。
最近、テレビや雑誌に登場する企業家の方々のスタイルを興味深く見る機会が多いが、ポケットチーフが大流行だ。普段あまり経験がないのか、テレビとなると、とにかく大胆な色柄で目立ちすぎのポケットチーフをしたスーツスタイルを見ると、私は画面から視線をはずすことにしている。それは教養とは程遠いものだ。その他にもよく目にするのが柄の混乱。ストライプのスーツにストライプのシャツ、さらに大胆なストライプ柄のネクタイをあわせているのを見ると、全く教養を感じない。 スーツの袖や襟から1センチ程出た白いドレスシャツ。控えめなポケットチーフ、シワひとつ無いスーツと同系色のソックス‥‥。これらを見たとき、知性が伝わってくる。知性を感じるセンスとは、「人にどう見てもらうか」よりも「自分が心地よくなる服装」だと思う。
企業家の皆さんは出張の機会が多い。工場出張、支社出張、研修会‥‥。久しぶりに見るオーナーに対して、社員達の緊張ぶりは想像ができる。会議では、久しぶりに聞くオーナーの言葉ひとつひとつをしっかりと記録にとることだろう。こんなときの服装に求められるのは、品格と権威が伝わってくることだろう。他方、会議後のリラックスタイムでは、「温かく」「親しみやすく」「みんな仲間」的パーソナリティーを社員は求めるに違いない。こんなときに効果的なのが服装センスだ。しかし、2つのシーンの服装を準備し、持ち運ぶのは大変つらいもの。そこで、1着のジャケットをONとOFFでセンスアップすることができるならば、出張時の持ち物を少なく、しかもファッション効果は充分だ。今回はそんなときの服装センスを提案したい。
では、イラストを参考にして頂きたい。ポイントはジャケット、グレーのチェック柄で、麻とウールの羽のように軽い素材がイメージ。
<ビジネスシーン>
ネクタイ‥‥グレー無地
シャツ‥‥白のドレスシャツ
スラックス‥‥ダークグレーのウール素材
ポケットチーフ‥‥白無地のリネン素材
<ビジネス後のリラックスコミュニケーション>
※ジャケットの袖を少したくし上げても自然でいいセンス。
スラックス‥‥白のコットン素材
シャツ‥‥白の洗いざらしのボタンダウンシャツ
シューズ‥‥スニーカー
ソックス‥‥白のコットン
出張は1着のジャケットの着回しセンスだ。こんなセンスに若い社員達は驚き憧れるだろう。
池田ゆう
ファッションデザイナー。ベストドレッサー賞選考委員長、(社)日本メンズファッション協会前理事長、(社)日本プロゴルフ協会学術委員。各界著名人や企業経営者の服装コンサルタントも多数手掛けている。監修したDVDに「池田ゆうの男のおしゃれ 人は見かけによるのです」がある。『あらゆる出会いの第一印象は最初の6秒が勝負!ベストドレッサー賞の選考委員長池田ゆうが誰でもできるスタイルテクニックを伝授。コツはたったの7つ! 同じスーツなのに全く印象が変わります!!』http: / / yuhikeda. com