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【海外リポート 2017】

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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親日台湾にひしめく日本企業

親日台湾にひしめく日本企業

(企業家倶楽部2017年8月号掲載)

 東京・羽田から飛行機で3時間半。沖縄まで旅するような心持ちで行けてしまうのが、隣国台湾である。実際、台北の緯度は沖縄・宮古島とほぼ同じ。時差も1時間しか無いため、体内時計にもさほど狂いは生じないだろう。面積は日本の九州と大差無い。主要都市の台北、台中、台南は、それぞれ九州の福岡、熊本、鹿児島といった位置関係だ。

 日清戦争後の1895年から終戦の1945年まで日本領であった彼の地では、その半世紀に渡る統治時代に、後藤新平、新渡戸稲造、八田與一といった先人たちがインフラ整備などを行った歴史的背景もあり、基本的に親日が根付いている。

 中国語圏ながら比較的ビジネスのしやすい環境が手伝い、14億人の巨大市場を擁する中国進出への足掛かりとして、台湾でビジネスパートナーを得たり、ノウハウを学んだりする事例も少なくない。今回は、そんな台湾における日本企業の状況を見ていこう。

日本企業は台湾社会に溶け込んでいる

 台湾の街を歩くと、いかに日本の文化やサービスが浸透しているか身に染みる。書店に立ち寄れば、もはや世界共通語となった日本発の漫画が大々的に売られているのはもちろん、芥川龍之介や夏目漱石、太宰治といった古典から、東野圭吾、湊かなえ、辻村深月のような現代作家による最近の小説まで並んでいた。CDショップでも、店内BGMとして日本人アーティストの曲が流れていることは多い。当然、日本発の楽曲が売られているコーナーはかなりの幅を占めている。

 都市部では、わざわざ探すまでも無くコンビニエンスストアに行き当たるが、そのほとんどはセブンイレブンかファミリーマートだ。それもそのはず。前者は約5000店舗、後者も約3000店舗を擁し、台湾国内の業界1、2位を独占している。

 生活に溶け込んでいると言えば、ファーストリテイリングの運営するユニクロは国内に65店舗を展開。海外事業に力を入れる良品計画の無印良品(MUJI)も42店舗と、両社とも「気付けばそこにある」存在だ。店舗形態は路面とショッピングモール内の両方あるが、いずれにせよ、外観を一目見ただけでは日本の店と区別がつかないだろう。商品価格は日本と同等か、少し高いくらい。物価の差を考えれば、割高と言えるかもしれない。

 衣服やライフスタイルの分野では、ストライプインターナショナルの店舗が目立つ。主力ブランド「アース ミュージック&エコロジー」22店舗、「イーハイフン ワールドギャラリー」14店舗など、新光三越、太平洋SOGOといった百貨店を中心に出店。ちなみに前者は台湾の新光グループと日本の三越グループが提携しての運営、後者は台湾の太平洋建設と日本のそごうが合弁して設立した会社が発祥であり、両社とも日本由来と言える。

多種多様な業種が活躍

 様々な用途のメガネを製造・販売して躍進を遂げているJINSも、15年11月に台湾初出店。その後も着々と店舗数を伸ばし、現在は台北以外の各都市も合わせて計14店を展開している。こちらも最低料金が約7500円と、価格帯は日本と比べて高めに設定されている模様だ。

 化粧品業界からは、女性から高い支持を受ける美容クチコミサイト「アットコスメ」を運営するアイスタイルが、化粧品販売の実店舗「アットコスメストア」を展開。高速鉄道(台湾版新幹線)も発着する巨大ターミナル台北駅構内にある店舗は、多くのお客で賑わっていた。

 飲食領域では、日本の「おふくろの味」を堪能できる大戸屋、讃岐釜揚げうどんチェーンの丸亀製麺が、奇しくも共に同数の26店舗を構える。吉野家、かつや、すき家といった日本でお馴染みのチェーン店も、当然の如く商店街に並んでおり、現地でも人気を博しているようだ。

 他業界も負けてはいない。ヘアカット専門店「QBハウス」、ホームセンターチェーン「東急ハンズ」など、思わぬところに出店していて驚いた。ふと建物の柱を見ると、貼られていたシールには「セコム」の文字。同社は台湾でも、セキュリティ領域におけるトップ企業だ。乗っていたバスの車窓から景色を眺めていたら、パーク24が運営する「タイムズ駐車場」が目に飛び込んできたこともあった。

 こうして見ると、いかに多くの日本企業がひしめいているか分かる台湾。ただ、飛び交う言葉はもちろん、気候や習慣はまるで異なる。過ごしやすさを追求しつつ、異国情緒を味わうにはもってこいの国。それが台湾だ。台北への飛行機は各航空会社から毎日何便も飛んでおり、短期間でも十分堪能できる。次の三連休にでも、行ってみてはいかがだろうか。

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