会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
(企業家倶楽部2009年4月号掲載)
創業者にとって、最も重要な課題の一つに後継者の選択があります。会社は経営者によって良くも悪くもなります。私は後継者を選ぶ時に社外からの採用を一切考えませんでした。社外の人材は知り尽していないなどの点で、外れの確立が高いと思います。
時折、社内に満足する後継者がいないと思い、100点の人材を求めて社外を探す創業者がいます。そのような創業者は社外から誰を持ってきても、きっと満足できない考えの人だと思います。その創業者が満足できる人材がいないからです。
トップに求められるのは、事業を発展させる力です。創業者はこの点で最も優れた後継者を社内から選ぶべきです。いくつかの欠点や失敗があっても、私は70点であれば素晴らしい後継者だと考えます。
私は50歳の時に経営から退く決意をし、53歳で後継者を決めました。経営に携わった約30年間、常業績を伸ばすことだけを考えてきましたが、いつも現状に満足できず、将来に不安を感じ、それを解決するために経営を続けてきました。会社が成長しているのにもかかわらず、常に満足できない自分の人生に疑問を感じ、経営を退くことにしたのです。
創業者は自らの退職を決めたら、早めに経営から退き、後継者に全てを任せるべきです。取締役に残ると自分の意見を押し付けてしまい、新社長は自らの決断を行えなくなります。自分の上から口出しされては、経営はできないのです。社長を辞めたら全権を新社長に任せるべきです。また、会社や社員のことを考えれば、新社長が70点以下なら降格させます。
私は56歳で代表取締役を辞任した後、未来ある子どものために何かしたいと考え、調査を目的に東南アジアを廻りました。孤児院などを訪問し、経済的な支援だけでは貧困はなくならないと感じました。貧困家庭に奨学金を渡しても、根本的な原因が解決されない限り、子どもたちは学校へ行けず、日々の暮らしのために働き続けてしまうのです。そこで、家庭が経済的に自立すれば子どもが毎日学校に通えると考え、農業指導を始めることにしました。
04年8月から様々な支援活動を見てきた中で、共感したのがカンボジアのNGO団体CEDACです。彼らと協力して、貧困な家庭を2年間で自立させる方式を考え出しました。そして05年4月、非常に貧困な家庭をまず50村から選び、農業などを教え始めました。それから2年後、約600世帯の90%が自立し、子どもたちが学校へ通うようになりました。
06年8月には、少し条件を厳しくした40村を選びましたが、70%が自立しています。カンボジアの何処の村でも通用する方法を確立できたので、08年8月からは、まず300村から支援活動を始めました。
現在は、家庭の自立を助けるための農業指導だけではなく、教育の重要性を伝える啓発活動を加え、村の全ての子どもたちが学校に通えるよう、より一層力を注いでいます。