会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
青山迎賓館パンケット
(企業家倶楽部2019年12月号掲載)
ハウスウェディングという新しいウェディングスタイルを創造、最大手として業界を牽引するテイクアンドギヴ・ニーズ(以下T&G)。2015年、創業者の野尻佳孝氏から社長を引き継いだ岩瀬賢治氏は、お客一人ひとりに合わせたサービスを提供、堅調な業績を創り出してきた。既存のルールや慣習に囚われず、果敢にチャレンジする岩瀬社長に強さの秘訣を伺った。聞き手:本誌副編集長 三浦貴保
問 団塊ジュニアたちが40代半ばを過ぎ、結婚適齢者が減ってきています。今、ウェディング業界の市場はどうですか。
岩瀬 市場は1兆5000億円と言われますが、今のところ年間平均1.2%ずつ減っています。
問 微減程度で良かったですね。御社の事業について教えて下さい。
岩瀬 大きな事業は3つです。1つは弊社の生業でもある国内のハウスウェディング。2つ目がトランクホテルというホテル事業。3つ目はハワイやグアムなどのリゾートウェディングの事業です。この3つが大きな柱です。
問 たくさん施設をお持ちですが、今国内ではどのくらいですか。
岩瀬 全国で66施設です。結婚式がない時は一般企業のイベントも承っています。ここ3年くらい「ママ・マルシェ」など自社イベントも活発にやり始めました。
問 今の若い人の結婚式に対する変化はありますか。
岩瀬 マスコミでは派手婚とか地味婚だと言われますが、実は多様化しているだけでそんなに変わっていません。一番小さいものだと、家族と本当に仲の良い友達だけで沖縄やハワイで挙げるリゾートウェディングがあります。一方、ホテルで立派にやられる方もおられるので、この幅が非常に増えたと思います。
問 御社の結婚式は憧れの的だと思いますが、金額的にはいくらですか。
岩瀬 平均で390万~400万円ですね。一般的にはこの15年ずっと上がっているのですが、弊社はこの単価を維持しています。早い段階で施設を作れたので、新規投資はリニューアル程度です。2億円投資して、翌年に120~130%の売上高にもっていけますし、効果は5年くらい続きます。
強みは一組ごとのオリジナル企画
問 御社の強みはどのように分析されていますか。
岩瀬 一つは貸切であることと、最初のご相談から結婚式当日まで一人のウェディングプランナーが担当することです。またそれぞれのお客様にオリジナルのものを提供することを前提に企画しています。会場のデコレーションも1組1組デッサンを描いて、そこから作ります。もう一つは、規模の原理でコストを抑えられていることです。またウェディング業界のルールを変えていけるポジションにいることも大きいですね。
問 強みであるウェディングプランナーは何人いるのですか。
岩瀬 グループ全体で社員は2600人ほどいますが、その中でウェディングプランナーは500人弱くらいです。全国に66会場あり、1日2組、半年前くらいから準備をすることを考えると、このくらい必要です。
問 一人で企画から結婚式当日までですから責任重大ですね。プランナーの平均年齢はいくつですか。
岩瀬 27~28歳です。自分よりも年上の方にプランを立てるということになります。
問 プレッシャーは大きいですね。ところで業界のルールはどのように変えているのですか。
岩瀬 外部とのコラボレーションを積極的にやっています。あとは品質を高めるために、カスタマーセンターをつくっています。これまで顧客満足度を認識し、改善していくという会社はなかったのですが、私たちはお客様1組1組に電話でヒアリングし、データ化して、改善に活かしています。
問 外部とのコラボはどのように。
岩瀬 例えば、リクルートマーケティングパートナーズと一緒に内装用の資材をレンタルするという仕組みを始めました。事業の継続が難しい地方の結婚式場が増えています。競合が減っていくことはプラスではありますが、あまりにもプレイヤーが減っていくと業界には良くありません。そこは弊社の力で、できることはサポートしたい。レンタルの事業やCRMなど自社のために作った仕組みを他社にも販売することを始めています。閉鎖的な業界なので他社とのコラボは今までありませんでしたが、この3年くらい積極的にやってきて、いろんな成果が生まれました。
(後編に続く)
■ Profile
岩瀬賢治(いわせ・けんじ)
1967年愛知県生まれ。大学卒業後、名古屋観光ホテル入社。レストランサービス部門に配属後、販売、宴会、営業企画、宿泊などあらゆる部門でホテル運営の経験を積む。2002年テイクアンドギヴ・ニーズに入社。「ハウスウェディング」スタイルを確立してブライダルマーケットに新市場を創出し、数店舗で支配人を務める。05年、大阪エリアのグループマネージャーに就任、07年本社に異動し、営業統括部長をはじめ5 部門の統括部長を務める。09年6月、取締役就任。2015年6月、代表取締役社長就任。