MAGAZINE マガジン

【トップに聞く】テイクアンドギヴ・ニーズ 社長 岩瀬賢治

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

常識に囚われずウェディングの新しい価値を創り出す 後編

常識に囚われずウェディングの新しい価値を創り出す 後編

TRUNK(HOTEL)(渋谷)

(企業家倶楽部2019年12月号掲載)
(常識に囚われずウェディングの新しい価値を創り出す 前編)

ホテルマンから転身

問 岩瀬社長は以前は名古屋でホテルマンをやられていたそうですが、T&Gに入社したきっかけは。

岩瀬 2002年に転職しました。最大の理由は、ベンチャーとして日本の結婚式を変えるという高い志があった。会社がだんだん大人になっていくことと志がうまく重なった時にとても良い企業になるのではと考えたのです。それを一緒に作り、ど真ん中に居られたら楽しいと思いました。

問 名古屋から東京の本部に来られたのはいつ頃ですか。

岩瀬 東京の勤務になったのは07年です。古臭いホテルで働いていた身としては、異常に見えました。やはりベンチャーなので、必要以上に自分たちを大きく見せますし、既存のモノを壊すことで自分たちの存在価値を見出すことが多く、大変刺激を受けました。

創業者 野尻佳孝

5年間は口を出させない

問 15年に社長を任されましたね。野尻社長からは何かお話がありましたか。

岩瀬 僕が社長を引き受けたのは「5年間は口を出さない」ということを野尻と約束したからです。実際、野尻は創業者にも関わらず、口出しをしてきません。なかなかできないことですから、その点、野尻はすごいなと思います。

問 社長に就任してどんなことに注力してきましたか。

岩瀬 T&Gという会社が好きで最前線で働いてきて、そこで働く社員のこともよく知っていることが僕の強みだと理解しています。幸い業界の最大手ですから、T&Gという会社をたくさんの人に知っていただく新しいサービスを生み出してきた。業界を牽引していくポジションにあることをしっかり認識してもらえる事業を4~5年かけてやりたいと思います。これまでのルールや慣習に囚われず、小さくてもゼロから1を作ることを意図的に実践してきました。

問 ターニングポイントはありましたか。

岩瀬 一つのターニングポイントは07年度に赤字になった時です。ベンチャーで大風呂敷を広げて、頑張ってきてもどこかで頑張りきれないことがある。その時に、ちゃんと反省ができて、良い会社になろうと思うことができて、今があるというのが一番大きいと思っています。

問 今、一番力を入れていることは何でしょうか。

岩瀬 1つは自分たちが提供している結婚式の品質を良くしていくことです。世の中の変化にどう対応していくか。とにかく外に目を向ける、外と手を組む、外と新しいものを生み出すことを心掛けています。社内にいると、良い化学反応が起きない。とにかくやってみて早くPDCAを回していくことが大事です。

「EVOL2027」をきちんと実践

問 「EVOL2027」について教えて下さい。

岩瀬 冒頭で申し上げた3本柱。グループ全体で1000億円の売上げを超える計画を、27年に向けて考えました。中身は国内ウェディングが500億円、リゾートウェディングが200~300億円、ホテルは300~400億円です。

問 国内は既に500億円以上あるのに、減ってしまうのですか。

岩瀬 今520億円ですが、頑張っても利益構造を改善できない店を、勇気を持って閉店する。そして営業利益率を上げていくのが一つのテーマです。海外は今100億円ですが、結婚式をするチャペルを広げて日本人だけでなく中国の方のリゾートウェディングも加速させます。

問 ホテル事業はどうですか。

岩瀬 野尻が頑張っていて、27年までに10のホテルを作ることを発表しています。政令指定都市には、別のホテルブランドを作っていこうと。宴会場を持ちますので、結婚式のシェアはどんどん高まっていく。ホテルとリゾートウェディングの事業を手掛けるのは野尻を含めて創業メンバーで、ゼロから1を作ることが好きな人たちです。何も考えずに走ってもらう環境を作るのが僕の仕事だと思っています。開業のコストもかかりますので、毎年どのように利益計画を作るか、主力事業のウェディングでうまく補填しながら調整していく必要があります。

問 課題はありますか。

岩瀬 変わろうと思っていても、変わるスピードが遅いことです。成功体験があればあるほど、難しい。会社のステージを変えようとしていますが、必要とされるスキルや力が変わるだけなのに、全部が変わってしまうのではと危惧している節がある。そうではないことをどう理解してもらうかが今の課題です。今までとは違う概念で作った事業やサービスが収益を生み出し、世の中から評価されるような事実を作っていきたいですね。 

問 岩瀬社長の夢は何ですか。

岩瀬 親会社の社長としてT&Gグループが、ホスピタリティ産業に常にイノベーションを起こしていくことです。「EVOL2027」を実現していくことで、それを認識してもらおうと思っています。一方、国内ウェディングとしては常に業界のリーダーであり続けたいです。

■ Profile

岩瀬賢治(いわせ・けんじ)

1967年愛知県生まれ。大学卒業後、名古屋観光ホテル入社。レストランサービス部門に配属後、販売、宴会、営業企画、宿泊などあらゆる部門でホテル運営の経験を積む。2002年テイクアンドギヴ・ニーズに入社。「ハウスウェディング」スタイルを確立してブライダルマーケットに新市場を創出し、数店舗で支配人を務める。05年、大阪エリアのグループマネージャーに就任、07年本社に異動し、営業統括部長をはじめ5 部門の統括部長を務める。09年6月、取締役就任。2015年6月、代表取締役社長就任。

一覧を見る