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【私の宝箱】アイスタイル取締役 共同ファウンダー 山田メユミ

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

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予想もしなかった生活者の反響

予想もしなかった生活者の反響

(企業家倶楽部2020年8月号掲載)

 学生時代から化粧品に興味を持っていた私は、1995年に大学を卒業すると化粧品メーカーに就職、商品開発に携わっていました。90年代後半はまだ現在のスマホでなくガラケーの時代でした。ちょうどインターネットが普及し始め、メールアドレスを持ち始める人が出てきた頃です。

 流行りに乗る形で、私もパソコンを購入しました。書くことが好きだったので周りの人たちから、「メルマガでもしてみたら」と勧められるまま、趣味の範囲で始めてみました。内容は自分で使ってみて良かったと思う商品の感想でしたが、すぐに「試してみたら良かった」という返信がありました。他にも、「この商品もお勧めですよ」、「良かったら紹介してください」といったコメントが北は北海道から南は沖縄まで日本全国から寄せられました。趣味の一環として始めたもので、特に期待していた訳ではなかったので、反響の大きさに驚きました。

 化粧品メーカーにいましたので、アンケートを通してモニターさんの声を聴くことはありましたが、ネットによって直接リアルな生活者の声を聴けることに鳥肌が立ちました。メルマガ読者の自発的な行動ですから、コメントから熱量が伝わってきました。その後も配信するたびに読者数が増えていきました。この「口コミ」を私たちのところで留めておかずに、「みんなでつくる、みんなのためのコスメガイド」を作り、生活者評価によるデータベースを構築できないかと考えるようになったのが起業のきっかけでした。

 この読者の熱量にほだされて、「生活者とメーカーの橋渡しになる」ことが私たちの使命だと感じていました。生活者中心の市場を創造していきたいという考え方が間違っていないと実感できました。「事業化するなら今しかない」と覚悟が決まったのは自然の流れでした。

 99年春から準備を始め、7月にアイスタイルを設立、12月にコスメ・美容の総合サイト「@cosme」をオープンすることができました。創業当時は友人たちが仕事帰りにオフィスに駆けつけ手弁当で支援してくれました。

 さらにメルマガの読者の人たちもボランティアで手伝いに来てくれ、毎晩毎夜、文化祭前夜の様な活気のある仕事場でした。生活者の評価を市場やメーカーにフィードバックする循環型社会の実現が会社の目的です。

 現在でもアイスタイルの大切にする価値観として「共創の精神」を掲げています。多様な社会を受け入れて、生活者から支持される新たな価値を共に創造していきたいという想いはこれからも変わらないでしょう。

 インターネット黎明期に趣味の一環として始めたメルマガに、予想を超える反響があり衝撃を受けたことが私の仕事観を変えるターニングポイントになりました。消費者のリアルな感想や評価といった生の情報が求められているのだと肌で感じ事業化しましたが、あの時の感動が私の働く原動力になっています。

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