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【2012年第14回企業家賞 審査委員長 講評】企業家賞審査委員長 日本電産社長 永守重信 氏

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

(企業家倶楽部2012年10月号掲載)

 今年は大賞受賞の該当者がいなかった昨年と違い、「企業家大賞」を選ぶことができました。また「チャレンジャー賞」にも若い経営者を選ぶことができ、嬉しく思っております。

 まず企業家大賞はヤオコーの川野幸夫会長です。ヤオコーは知る人ぞ知る、埼玉県中心の食品スーパー。簡単にはいかない昨今の状況下、ユニークな展開で大手とどんどん戦い、20期連続増益です。前期の売上2373億円、経常利益105億円。素晴らしい成績です。クックパッドという優良企業がありますが、食事の献、経常利益たらヤオコーへ行け、とね。その面白い売り場に答えがあります。私は行ったことないですけどね(笑)。

 川野会長がまた立派な方です。仕事以外にも川野財団など社会貢献もしておられます。うちでもいつも家内が「今夜、何食わそうかな」と言っているので、ぜひこういう立派なスーパーを京都方面にも作ってもらいたい。遅きに失した大賞受賞です。立派な方がまだいくらでもいらっしゃるということですな。

 続いて「企業家賞」です。まずパルの井上英隆会長。ほら、ダークスーツでズボンは白。普通こういう席へ出てくる格好ではありません。さすが発想が違います。若い女性相手の商売だから、これくらいおしゃれして、ひげでも生やさないと売れないのでしょう。パルでは売れた理由も売れない理由もすべて追究して、白熱した意見を売り場にバックするから、いつも消費者がほしいもんが並んでる。私は知りませんよ。うちの会社の若い女性が言ってたんです(笑)。前期の売上853億円、経常利益78億円。立派な成績です。

 次はスタジオアリスの本村昌次会長。子供写真館です。これまたアイデアの勝利ですな。何や毎回新しい服が500種類くらいあって、それもいい加減な品物ではありません。うちで買えないブランドものです。それに若い女性がうまいこと子供あやすから、ニコーッとした写真が撮れるんですな。前期の売上は341億円、経常利益58億円。素晴らしい業績です。韓国、台湾、中国でも事業展開していますが、これからもっと伸びるでしょう。

 大研医器は製造メーカー、ものづくりの会社です。手術中に排出された血液や体液を人が触れずに処理できる医療機器「フィットフィックス」を開発しました。日本人は血が嫌いですからな、僕なんか見たらフラフラです。まずは販売営業からスタートされたので、この発想が持てたのでしょう。これはまさに素晴らしい社会貢献。世の中になくてはならない会社です。山田満会長は人真似が嫌いだそうですが、いかにも偏屈そうな顔ですね(笑)。前期の売上65億円、経常利益10億円強。信念は「現場」だそうで、いい会社です。こういう会社がもっと日本に出ないといけません。


 今まで紹介した全員が“会長”だというのは、年だということです。そこで平均年齢を下げるのは「チャレンジャー賞」を受賞したクロスカンパニーの石川康晴社長です。前期売上560億円、経常利益80億円と、立派な業績です。さらに「純利益1000億円を目指す」と言うから、これは孫正義、永守重信も負けるすごいホラ吹きです(笑)。こういうどんどんホラ吹いて伸びる人と、小さくまとまってお山の大将になっている人と、若い人も二つに分かれます。でも40代はホラ吹いてやっていかなあかん。石川社長は経営も意欲的で、まさに“チャレンジャー”。ホラを実現化して、今度は大賞を取ってください。


 こういうわけで今回はやや平均年齢が高いが、素晴らしい方々を選ぶことができました。この企業家賞では営業利益が大賞は100億円、企業家賞は10 億円を一つの基準にしていますが、昨今はなかなか営業利益10億円が10年続く会社がありません。この基準は私が決めたものなんですが、実はその縛りで今、自分の首を絞めております(笑)。

 でも基準を下げたら権威がなくなる。だからもっと若い人が高い目標を持ってチャレンジしてくれないと、賞を渡す人がいなくなってしまいます。若い人がもっと大きな夢を持ち、ホラを吹いて高い目標に挑戦してくれないと日本の将来はありません。みなさん、私たちが「こんなにいい会社がたくさんあったら選べなくて困るわ」と思うくらいのいい会社をつくって、産業界に貢献してください。

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