会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
(企業家倶楽部2020年4月号掲載)
「広告」と聞きどんなイメージを持つだろうか。インターネットやSNSなど様々な文化が普及し、情報過多になる昨今、「広告」は少しネガティブなイメージを持ちつつある。しかし、正しく消費者に受け取られる情報は「絶対に良いものであり、広告も心に響くものはある」。そう力強く語るのはMacbee Planet社長の小嶋雄介だ。
質の高い申込みを届ける
Macbee Planetの主な事業は成功型広告運用を中心とした集客である。自社開発ツールを使いデータの収集から分析、それを元に顧客獲得のためのコンサルティングまでを行う。彼らのツールは主に2つ。データ解析ツールである「ハニカム」とWeb 接客ツール「Robee(ロビー)」である。このツールは「誰がいつ、どこからアクセスし、何分間滞在して何を購入したのか」など、ウェブ上の行動履歴を解析することができる。そしてこの情報を元に、広告を掲載する媒体のアドバイスや載せる記事の内容までをコンサルティングすることで、継続して利用してくれる顧客、いわゆる「ロイヤルカスタマー」を獲得することが彼らの強みである。
この「ロイヤルカスタマー」を獲得するために重要なのが「LTV(顧客生涯価値)」である。LTVとは、顧客が特定の企業と取引を始めてからどれだけの利益をもたらすかを図る指標である。「どんなに申し込みをたくさん取ってきたとしても、クライアント側の企業は成長しません。LTVが高い、つまり質が高い申し込みをどれだけ獲得できるかに重点を置いた広告運用をしているのが僕らが選ばれる理由の一つです」
自社ツールを用いLTVを予測し、申し込みの獲得のみならず、その後のユーザーの価値やクライアント側に与える影響までを見据えた広告運用が他社にはない、彼らの強みなのだ。
ユーザーの幸せとクライアントの成長を
Macbee Planetは2015年に設立された新進気鋭の総合広告代理店である。社員60人のうち15人ものエンジニアを抱え自社ツールの開発に注力し、わずか4年で46億円を売上げた。「売上げはあるように見えますが、他社と比べた利益率はまだまだ。ただ、今の売上げがあるのは自社開発ツールがあるからです。このテクノロジーをもっと出して会社経営をしていきたいです」と小嶋は語る。
そんな彼らの目標は28年までに最低でも売上げ1000億円企業になることである。しかし、設立わずか数年でクライアントを獲得していくのは決して容易いことではない。既存の代理店に頼んでいる広告運用を急に切り替えるのは抵抗がある。当然最初は信用してもらえないが、クライアントの課題を抽出し、Macbee Planetに任せることでその課題はどう解決されるのかをしっかりプレゼンテーションしていく。お互いの成長を考え、伝えることで、「その思想と考えがあるならMacbee Planetに懸けてみよう」という会社を増やしているのだ。
いざ運用して、結果がすぐに出ないこともあるが、彼らの運用は成果報酬だ。掲載した広告から商品購入や申し込みがあってから一定の報酬をもらう。「逆を言えば、クライアントが儲からなければ我々は一切儲かりません。営業やコンサルというよりは、どうしたら売上が上がるかを一緒に考えていく戦略パートナーという位置付けです」。申し込みを取ってくることがゴールになっている会社ばかりであるが、彼らはその申し込みによってユーザーが幸せになったのか、クライアントの成長に繋がるのかまでしっかり考えている。
本当の「リーダーシップ」
経営をする上で小嶋が大切にしている心構えは「一喜一憂しないこと」である。会社は順風満帆な時もあればそうじゃない時もある。「日々刹那的に起こる事柄に対して、会社としておごったりせず、良い時も悪い時も振り子のように訪れることを理解し、会社全体を見ながら経営しなければなりません」
そんな小嶋が課題として挙げたのは人材育成だ。小嶋はもともとリーダーシップを執るのが得意ではなかった。「20人いたら20人が幸せな形で仕事をしてくれるのが僕としても幸せというタイプであり、会社設立から2年目までは間違っていないと思っていました」。創業当時は一人ひとりと膝を突き合わせて仕事をしていたが、組織が大きくなるとそうはいかない。自分自身がもっと発信力を持って、会社が何を考え、どこに向かっているのか、導きたい未来を語り、そこに付いてきてくれる仲間を育てていくことが重要だと気付いたのである。
輝ける広告業界のために
学生時代から自分で会社を経営したいと思っていた小嶋。その勇気が出ず自信をつけるため、総合代理店で働き始めたのが広告業界に入るきっかけとなった。もともと消費者として広告が好きであり、広告業界に対して憧れもあった。
しかし今の世の中はどうだろうか。「色々な情報が世の中に溢れていく中で、気づけば一消費者として自分でも広告を鬱陶しいと思ってしまうことがあります。でもそれは僕だけではなく多くの人がそういう印象を持ってしまっていると考えると悔しいのです」。
情報や広告の良さを伝えきれていないために、広告に対してネガティブなイメージになってしまっている。競争が激しくなる中で、数字に囚われたマーケティングが蔓延しているのも一つの要因だ。「果たしてそのマーケティングは正しいのか、そこに疑問を持たなくていいのか」と小嶋は警鐘を鳴らす。
「僕たちがデータやテクノロジーを活用し、他社とは違うマーケティングで、もっとワクワクした広告業界に変えていくことで、もう一度広告や情報の価値が改めて感じられるようになってほしい」
Macbee Planetの挑戦はまだ始まったばかりである。(馬場美衣)