会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

(企業家倶楽部2012年8月号掲載)
(写真右)イデアインターナショナル 代表取締役社長 橋本雅治 氏
(写真中央)コメンテーター:徳永卓三(経営誌「企業家倶楽部」編集長)
(写真左)キャスター: 宮舘聖子
この記事は、2012年 BS12TwellV 月曜18 時30 分から放送中のワールド・ビジネス・チャンネル同名番組を紙面化したものです。今、日本を最も面白くする企業家の熱きドラマです。

象の鼻の形をした人気の扇風機「エレファン」
サプライズを創造するデザイン
我々の事業は一言で言うと、「感性のものづくりメーカー」です。これまで世界を牽引してきた日本のメーカーは、機能と価格に照準を絞って成長してきました。しかし、現在は消費者が多様化し、感性も豊かになっています。その中で、我々は基本的な機能はしっかり作りつつ、そこに感性を入れたデザイン重視の商品を作っているのです。
我々は自社を「ボーダーレス=クリエイティブ=カンパニー」と呼び、家電からオーガニックコスメまで幅広く手掛けています。通常、メーカーは家電や時計など生存領域を決め、そのジャンルの中で商品開発を行います。我々はそのように枠を狭めることは面白くないと考え、領域に囚われることなく、多種多様な商品を生み出してきました。
現在は感性に基づいたものづくりを基本に、海外のデザインカンパニーの商品を輸入する商社の役割を担うと同時に、我々が作り上げたものをお客様にお渡するための小売店を9業態28店舗で経営しています。
我々はお客様のニーズを汲み取るのではなく、我々の方からサプライズを与えたいのです。お客様の意表をつく商品作りが我々の得意分野。お客様を楽しくさせたいという思いから、驚きと楽しみを大きなコンセプトにしています。
人間至上主義経営
企業理念は「人間至上主義経営」です。「企業というものは人の幸せのためにある」と考えています。アメリカの経済学者ドラッカーも「企業は人の幸せのため、社会貢献のために存在する」と断言しています。金儲けだけを考えて動いている企業もありますが、我々は自社の本質を貫きます。そのための「人間至上主義経営」です。社員はもちろん、コラボレーションしているデザイナーやオーガニック農家の方々を我々のビジネスでいかに幸せに出来るかを考えています。
我々は単に規模拡大を目指すだけでなく、他社には出来ない創造性に溢れた仕事を目指します。そして、それが皆さんの幸せに繋がれば本望です。
トライアスロンからチャレンジ精神を得る
私はトライアスロンを5年間続けていて、もう50歳となりました。今年はハーフセンチュリー生きた記念として、今までで1番自分に負荷をかけるつもりです。今年1年で9種目12大会エントリーしています。1番辛いのはトライアスロンの4倍の距離のアイアンマンです。この記念の年に9種目全完走を目指します。
トライアスロンは何も考えずに挑んでも完走出来ません。ペース配分やどこでエネルギーを補給するか、戦略的に考える必要があります。そして、諦めないことが肝要です。この競技は諦めなければ必ず到達出来ます。戦略性と不屈の精神を養う競技であり、これらはビジネスにおいて大変重要です。
ビジネスも苦しい時に諦めたらそこで終わりです。そこで諦めずに壁を乗り越えようとすること自体が成長に繋がります。その点はトライアスロンでも体感できます。しかしトライアスロンを何度か経験すると、出来ることが当たり前になってしまい、この大会に対してのチャレンジスピリッツが薄れてしまいます。さらに距離が長いアイアンマンに挑戦することで、再びチャレンジスピリッツを沸き立たせているのです。この挑戦が出来ると、仕事に対してもチャレンジする姿勢が生まれるでしょう。
上司から学んだベンチャースピリッツ
私は創業前に2度サラリーマンとして会社に勤め、1度は経営者も経験しています。大学を卒業してコピー機やファックスを販売する会社に就職しました。私は上司の言うことをあまり聞かず、自分なりのやり方で仕事をしていたので、3ヶ月くらいで異動させられましたが、次の上司は私なりの方法で仕事をさせてくれたので半年くらいで成果を出せました。そこから長い間、トップセールスの称号である「横綱」を頂いていました。
その後、私の父が大分県で経営していた結婚式場が倒産寸前となり、私がサポートしなければならない状況だったため、4年間ほど結婚式場を経営していました。しかし結局、今で言う会社更生法を申請することになりました。20代で倒産を経験することはなかなか無いでしょうから、その時は厳しい状況でしたが、今では父のお陰で若い時代にそうした経験が出来たことに感謝しています。
その後、東京に戻りマルマンに就職しました。マルマンでは創業経営者の下で4年間鍛えていただきました。ここで私が学んだのはベンチャースピリッツです。私が今まで見た経営者の中で最もベンチャースピリッツを持っているのは片山豊氏だと思います。僕らに言うことは「人のやらないことをやれ」、そして「大失敗しろ」。今の僕があるのは片山社長のおかげだと思っています。
しかしワンマン社長でしたので怒られることもしばしばありました。31歳の時、社長と激しくぶつかり、最終的に僕が譲らなかったので解任され、窓際に追いやられました。ところが2ヶ月程経ち、ある部署の部長が業績不振で退任することになった折、社長から「お前やってみるか」と声をかけていただきました。それが転機でした。営業は得意でしたが、ものを作った経験は無く、そこでものづくりを覚えたのです。
成長をもたらす逆境
起業する前に苦しいことを何度も経験したため、イデアを創業してから17年間はあまり苦しいと感じませんでした。思い起こせば、上場して即赤字になったこともありましたし、この3年は赤字が続いて社員たちに大変な思いをさせてしまいました。
上場後は私が現在行っている事業をある程度社員に任せ、私は一歩後ろに引いて経営に当たるというスタンスになっていました。その時に新しく始めたのがギフトカード事業とインターネット事業でしたが、どちらもうまくいきませんでした。上場直後にその2つの新事業が失敗してしまい、私が新事業の運営に携わっていたため既存事業の方にも力が入らず、3期連続で赤字が出てしまったのです。この新規事業には我々の「感性のものづくり」が欠けていました。もう一度原点に立ち返り、「感性のものづくり」を基本としたビジネスに集中しようと取り組んできました。ようやく建て直しが功を奏し、今回の中間決算で上場後初の黒字を達成できました。
逆境が私の人生です。しかし、苦しいときほど逆にやる気が湧いてきます。「よし見てろ」という気持ちが沸き起こってくるのです。逆境が定期的に訪れないと人間は老けてしまいます。私にも今回3期連続赤字という逆境が訪れましたが、定期的にある程度逆境が起こらなければ、自分自身の成長も無かったでしょう。
50歳を節目に心機一転
旅行グッズのセレクトショップ「トラベルショップ ゲート」が大変好調です。この店の商品のほとんどは自社開発です。海外でも好評で、海外出店を目指しています。我々のこれまでの戦略は、直営店でしっかりブランドを確立することでした。現在、インテリアショップやトラベルショップ、オーガニックショップに関してもある程度ブランドが確立し、収益も上がり始めています。これからはフランチャイズ制で店舗展開を進めるつもりです。
我々はもともとメーカーですので、1つのショップの多店舗展開を最初から考えていません。お客様を驚かせるような、他社がやっていない業態を生み出すことが強さです。海外マーケットも視野に入れ、日本でも海外でも直営及びフランチャイズの形態を広げることが今後の戦略です。
私も50歳という節目を迎えました。イデアを立ち上げて17年、上場後の3年間は非常に経営が厳しく、株主の方々や社員の方々には迷惑をかけました。この50歳という年は、心機一転し、経営者としての1年目という気持ちで取り組むつもりです。これから5年間でイデアをもう一度、新しいピカピカの会社にするため、全力で突っ走っていきます。
P r o f i l e
橋本雅治(はしもと・まさはる)
1961年大分県生まれ。84 年に慶應義塾大学法学部卒業後、キャノン販売(現キャノンマーケティングジャパン)に入社。87年退社し、家業のホテルの経営再建を任される。92年、株式会社マルマンに幹部候補生として入社。取締役時計事業部などを歴任。95 年退職。同年12月、デザイン性の高いライフスタイル商品の企画・製造・販売を手がける株式会社イデアインターナショナルを設立、社長就任。