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【ベンチャー企業の法務心得 9】クレア法律事務所 代表弁護士 古田利雄

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

企業家倶楽部アーカイブ

独占禁止法の課徴金の減免制度

(企業家倶楽部2011年8月号掲載)

 談合に対する課徴金は年々高額化しており、光ファイバーのカルテル事件では160億円、焼却炉の談合事件では270億円もの課徴金が課されました。

 課徴金の減免制度は、談合やカルテルを行った企業であっても、公正取引委員会に自己申告すれば、課徴金や刑事告発を免除または減額する制度です。

 課徴金の減免制度は、企業がコンプライアンス体制を整備し、カルテルを発見しても、当局へ申告するインセンティブがないこと、カルテルは秘密裏に行われるため発見される可能性が低く、物証を残さないために解明が困難であることを背景としています。

 もともとは米国の制度(len iency/リニエンシー)ですが、司法取引の文化のない日本で採用されたのは2006年のことです。

 最近では、平成20年に鋼管杭に関するカルテルの事案で、自己申告した住友金属工業、新日本製鐵、クボタが、それぞれ課徴金の免除、50%減額、30%減額を受けています。

 課徴金減免制度の適用を受けることができるのは「不当な取引制限」(独禁法7条の2第1項)を行ったことにより課徴金を納付すべき事業者です。

 課徴金減免制度では、公正取引委員会の調査前に最初に申告してきた1社は課徴金が全額免除される。2番目は50%減額、3番目から5番目は30%減額されます。

 例えば、カルテルが5社で行われていたとすれば、参加企業はすべて何らかの形で減免を受けます。ただし、4番目と5番目の企業が減免を受けるためには、公取委が把握していない情報を提供しなければなりません。

 公取委の調査開始(立入検査や捜索・差押)の日から休日を除いて20日以内に公取委に申告した企業は、3社までが30%減額されます。この場合にも、申告した企業は、公取委が把握していない情報を提供しなければなりません。

共同申請できるか

 カルテル参加企業が談合して課徴金減免制度を利用することはできません。公取委に対する申請は単独で行わなければなりません。ただし、同一企業グループ内における親子会社などが共同して申請することは認められています。

申請の方法

 企業が調査開始日前に申請する場合には、第1報として違反行為の概要だけを記載した「報告書」を公取委にファクシミリします。そして、原則として10日以内に詳細な「報告書」と資料を提出するという2段構えになっています。

 どの会社が1番最初に申告したかが争いにならないようにするためです。

 企業にとっては、課徴金の減免の割合に関わるので、この順番は非常に重要になるため、公取委は匿名での申請順位の照会に応じています。

 申請の主体は会社であることが要件なので、社員個人が内部告発の形で公取委に申請しても、この制度の適用はありません。

 ただし、その内部告発の後に会社が申請した場合でも、改めて会社が申請し、それが課徴金の減免制度の要件を満たしていれば認められることになります。

Profile

古田利雄

ベンチャー企業の創出とその育成をメインテーマに、100社近い企業の法律顧問、上場会社の役員として業務を行う傍ら、ロースクールで会社法の講座を担当している。平成3年弁護士登録。東京弁護士会所属。

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