会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
(企業家倶楽部2012年12月号掲載)
前回は、インターネットと親和性の高い「継続課金」のビジネスモデルについて、その美点と注意点をお話いたしました。さて、今回のキーワードは「未来情報」。ビジネスにおいて先を読むことの重要性は言うまでもありませんが、そうした未来情報をいかにつかんでいけばよいのか、インターネットという切り口から論じたいと思います。
そもそも ヒト、モノ、カネの配分を行うことが経営
企業の3大リソースといえば「ヒト」、「モノ」、「カネ」です。そして、この最適な配分を行うのが「経営」の本質です。実際には、現実の経営は非常に複雑です。しかし、日夜降りかかる様々な問題や課題に対処するとき、経営者が具体的に実行するのは、結局経営者としての自分自身も「ヒト」に含めたリソースの配分なのです。ですから、世の経営者たちは、常にこれらの3大リソースをどのように動かすかに頭を悩ませているわけです。
この3大リソースの配分に間違ってしまったら大変です。では、この3大リソースの配分に間違わないために必要となる「要素」とはなんでしょうか?経営者の経験やスキルという声が聞こえてきそうですが、経験が浅く、スキルもまだ十分ではない経営者にも成功のチャンスがあるように、経営者の経験やスキルも重要ですが、そこは本質ではないように思います。
今回は、経営における最適なリソース配分を行うために、本当に価値のある「要素」とはなにか、というテーマでお話をさせていただきます。
バック・トゥ・ザ・フューチャー(PART2)
『バック・トゥ・ザ・フューチャー(PART2)』という映画を覚えているでしょうか?今から20年以上も前の映画ですが、日本のテレビでも繰り返し放映されたので、見たことがある、覚えているという読者も多いでしょう。
この映画の中で、主人公マーティーの宿敵ビフは、未来の世界で出版されていた、1950年?2000年のスポーツの試合結果が書かれた年鑑(未来のスポーツ年鑑)を手にします。そして宿敵ビフは、タイムマシンで1955年にタイムトラベルし、高校生時代のビフ本人(自分自身)にこのスポーツ年鑑を手渡すのです。こうして未来のスポーツ年鑑を手にしたビフは、この後、スポーツ賭博で大金持ちになるという話でした。
もし、ビフのように未来のことが解れば、すなわち未来のスポーツ年鑑のような「未来情報」を持っていれば……「限られたリソースを、なにに賭けるべきか」という、リソース配分に間違うことはありません。ここで「未来のことなど解るはずがない」という意見もあるかもしれませんが、実は、そうでもありません。神様ではない人間が、未来を知る方法について、たとえば経営の神様とも称された故ピーター・ドラッカー氏も、2つの具体的な方法を明らかにしているのです。この2つの方法について、私の意見も織り交ぜて、ご紹介しましょう。
未来のみつけかた
1つは、未来を自分の力で創りだしてしまうことです。成功者とは「こういう未来を作りたい」という信念と情熱を持って、それを実現する人のことです。「未来は、どうなるんだろう?」と考えるのではなくて、「未来を、どうしたいか?」と考える人たちこそ、未来を創るわけで、そうした人たちには、当然、未来が見えています。
例えば、ソニー創業者の故井深大氏は「未来を予測するということは、あんまり意味ないんじゃないかと思うのであります。未来ってのは、作り出すものです」という、有名な言葉を残していますね。
先回りしておきますが、これは精神論ではありません。確かに、遠い未来のことは少し難しいかもしれません。とはいえ、例えば3年後に、全く新しいデバイスを生み出そうと、それに向けて日々技術開発を進捗させている経営者にとっては、3年後の未来に、そのデバイスが世の中に出て行くことは確実な未来です。比較的近い未来については、かなり正確に見えている人は、それなりにたくさんいるということです。
もう1つは、未来の世界で大成功しているアイディアは、今この瞬間にも、世界のどこかで生まれているということに意識的になることです。未来の世界で大成功している商品やサービスというのは、まだ一部の人にしか受け入れられていないだけで、既に、私たちの身の回りにあるはずなのです。
たとえばグーグルにも、フェイスブックにも、ユーザー数が1ケタという時代があったことを忘れるべきではありません。最初に、新しいサービスに敏感な誰かが使ったからこそ、グーグルやフェイスブックの今があるのです。ということは、今、ユーザー数が1ケタという商品やサービスの中にも、次のグーグルやフェイスブックが隠れているはずなのです。ただ、私たちには、それが具体的にどの商品やサービスであるか、判断する力に欠けていることが多いというだけの話です。
未来情報を「集める」という発想が重要
繰り返しになりますが、経営を成功させるには、「ヒト」、「モノ」、「カネ」という3大リソースを、未来情報に従って、最適に配分する必要があります。そして未来情報は(1)自ら未来を生み出そうとする人(2)まだブレークしていない優れた商品やサービスに気づいている人、の2種類の人々が持っています。
未来情報を得るためには、「自らが、こうした人々の仲間入りをする」という方法もあります。しかし、それは具体的には、成功している経営者になるか、または、新しいサービスにとても敏感な感性を磨く必要があり、簡単なことではありません。だからといって、未来情報をあきらめてしまう必要はありません。
実は、普通の人であっても、未来情報を得ることが可能です。その方法は、「こうした人々とつながる」というソーシャル・ネットワーク的なアプローチを取るということです。
具体的には、(1)にあたる、「未来を作り出せる力を持っている経営者たち」とつながること。そして(2)にあたる、「将来ブレークする可能性のある商品やサービスに対する嗅覚にすぐれた人たち」とつながることが重要です。こうした未来情報のソースとしてのソーシャル・ネットワークを意識して形成しているかどうか、今一度、自問自答してみてください。
人間関係の維持コストは、決して小さくありません。であれば、形成されるべきソーシャル・ネットワークの費用対効果も考えないとなりません。もちろん、こうした費用対効果だけで、つきあう人を決めてしまうことには、問題もあります。誰にも、損得勘定ぬきでつきあっていきたい友人や愛する人々がいるでしょう。
しかし、経営者たるもの、最も重要なのは、創りだしたい未来を生み出す「理念の実現」であることを忘れてはなりません。そのためには、どうしても何かを犠牲にしなければならないときがあり、それを受け入れる覚悟がなければ、経営者にはなれないと考えるべきではないでしょうか。
ソーシャル・ネットワークの力は偉大です。ただし、その中身には未来情報のソースとしての品質の優劣があり、経営者は、その品質にこだわりながら、自らのソーシャル・ネットワークを発展させていかなければならないのです。

PROFILE
石田宏樹(いしだ・あつき)
1972年佐賀県生まれ。98 年3月慶應義塾大学総合策学部卒。在学中に、有限会社リセットを設立、取締役に就任。同年10月、三菱電機株式会社よりISP立ち上げ依頼を受け、株式会社ドリーム・トレイン・インターネット( DTI)設立に参画、99年4月には同社最高戦略責任者に就任し、顧客満足度No.1プロバイダー」に育て上げた。2000年5月、株式会社フリービット・ドットコム(現フリービット株式会社)を設。2007年10月、DTI を買収、2008 年9月に完全子会社化した。2007年3月20日東証マザーズ上場。第11回企業家賞受賞。