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徳永編集長の視点論点

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

編集長がゆく!

前を向いて転び、貪欲に学ぶ

新年あけましておめでとうございます。2022年がスタートしました。世界は未だコロナ禍でありますが、前を向いて進むしか道はありません。以前、ディー・エヌ・エー創業者の南場智子会長にインタビューした時のことです。

「私は転ぶ時も前に転びます。横でも後ろでもなく前に。そうしたら転んでも半歩、前進するでしょう(笑)」と笑顔で話してくれました。企業家とは何とたくましいのだろうと思いました。ベンチャーは新しいことへの挑戦の連続ですから、転んで当然、失敗の中からでも学んでやるぞという貪欲さに魅力を感じました。

 このディー・エヌ・エーに創業期から投資し、IPO支援をしたVC代表の村口和孝さんから聞いた印象深いエピソードがあります。現在では、傘下に球団を持ち、ゲームや自動車、医療分野へ進出していますが、元々はネットオークションサイトから始まりました。

 事業計画書をもとに資金調達し、それこそ寝る間も惜しんでシステム開発を急ぎました。そしていよいよサービスをリリースしようとシステム外注先に進捗状況を確認するとなんと全く進んでいなかった。発注先担当者の「大丈夫です。開発は順調に進んでいます」という言葉を信じ、途中経過を確認せずにいたのでした。その後、天地がひっくり返るほど慌てふためいたのは想像に難くありません。

 しかし、被害者づらしていても事態は収拾しません。南場さんは覚悟を決め、サービス開始日までに出来ることに集中しました。この苦い経験からディー・エヌ・エーは変わりました。ネット企業のコア事業であるシステム開発は外注しないこと。有能なエンジニアを集め自社内で事業開発できる組織へと変えたのです。その結果、オークション事業の次に携帯ゲーム、SNS、モビリティ、ヘルスケアと次々と新しい領域に進出することが出来るようになりました。まさしく、失敗から強烈に学び、自社の強みに転化させた好例といえるでしょう。

 逆境から学んでいるのはベンチャーだけではありません。トヨタが2021年全米市場の新車販売台数でGMを抜き首位になったというニュースが伝えられました。GMは90年ぶりにトップを外国メーカーに明け渡したのですから大きな話題となっています。コロナによる世界的な半導体不足の中、トヨタは今から10年前の2011年に東日本大震災の経験から学び、より多くの部品を確保していたため、サプライチェーンの差がトヨタの勝因になったと分析されています。

トヨタのミッションは、「わたしたちは、幸せを量産する」です。幸せを生む自動車を量産し続けることがトヨタの使命なのです。そのためには「だから、くふうと努力を惜しまない」と、ホームページに書かれています。トヨタマンは「カイゼンの種は尽きることがない」といいます。80年間、この想いを持ち続けているからこそ国内上場企業で時価総額トップに君臨しているのだと思います。

正月に先祖の供養と感謝を伝えるためお墓参りに行ってきました。我が家の墓石には、「志」の文字が刻まれています。命は有限なのですから、普段から死生観を持つことは大切なことです。そして、自分が今、生かされていることへの感謝も忘れてはいけません。その有限の命の時間を使って何をするのか。「何のために仕事をするのか」、改めて考えるいい機会にしたいと思いました。

企業家倶楽部のミッションは、「企業家精神で人々を幸せに」。ビジョンは、「挑戦する人にリスペクトと共感を」掲げ、企業家精神が溢れる社会を目指し、邁進して参ります。
(徳永)

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