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東京NBCスタートアップ企業の育成を加速

東京ニュービジネス協議会(以下NBC)がスタートアップ企業の育成に力を入れている。9月26日、東京・青山のfabbitで「第9回スタートアップ・メンタリング・プログラム」を開催した。この日は8社のスタートアップ企業経営者が集結、ピッチ大会に挑んだ。いずれも時代の先端をいく新技術や、新しいアイデアで成長している企業ばかり。上位2社は2023年3月に開催される決勝大会への切符が得られる。その決勝大会で優勝すれば、シリコンバレーでのアクセラレーションプログラム参加の機会が授与されるというものだ。

NBC主催、fabbit青山の協力の下、 この日は野村證券、SBI証券、 SMBC日興証券、東海東京証券、香川證券、エイチ・エス証券、三井住友信託銀行が協賛に加わった。スタートアップ企業を指導し、より確実にIPOに導くために、2021年11月からIPOスクールをスタート、2022年のIPOスクールも、9月からスタートしている。
今回で9回となるスタートアップ・プログラムだが、ベンチャーをしっかり育ててこそ、日本経済の活性化に繋がるというNBCの強い志がみてとれる。


開会の挨拶をするNBC会長の井川幸広氏

8社がピッチ大会に挑む
第9回のピッチ企業は以下の8社である。
ICS-net㈱ 代表取締役 小池 祥悟氏
㈱ANDART 代表取締役 松園 詩織氏
㈱エアールーム・テクノロジーズ 代表取締役兼CEO 大薮 雅徳氏
AironWorks㈱ CEO 寺田 彼日氏
㈱しくみデザイン 代表取締役 中村 俊介氏
HumanOS㈱ 代表取締役 池田 清和氏
琉球アスティーダスポーツクラブ㈱ 代表取締役 早川 周作氏
㈱TRAYD INNOVATION 代表取締役CEO 玉城 偉光氏

第9回スタートアップ・メンタリング・プログラムに挑んだピッチ企業と審査委員・メンターの面々


18時きっかりに会は始まった。
モデレーターはNBC副会長で、このアントレプレナー創出委員会会長の青木正之氏である。この青木氏の情熱と温かいアドバイスがこのピッチ大会の名物ともいえる。
3年前からNBC会長を務める井川幸広氏は、「本日発表する8人は、選りすぐりの強者ばかり。シリコンバレーを目指して頑張って頂きたい」とエールを送った。

NBCが実施する「スタートアップ・メンタリング・プログラム」は審査員・メンターの顔ぶれが豪華だ。
クリーク・アンド・リバー社社長、NBC会長の井川幸広氏、NBC理事で、エスクリ会長 岩本博氏、エアトリ会長 大石崇徳氏、カナミックネットワーク社長 山本拓真氏、MS-Japan社長 有本隆浩氏 識学社長 安藤広大氏、の6名だ。いずれも上場企業の経営者だ。こうした錚錚たる顔ぶれを揃え、様々なアドバイスができるのも、NBCならではといえる。

この日は会場に50人、リモート参加者220人がピッチ大会を見守った。持ち時間は一人7分だ。7分間で自社のすべてをプレゼン、審査員&メンターの評価を得る。

最優秀賞はAiron Worksの寺田CEO
緊張感が高まる中、8人の役者の舞台が始まる。ピッチ時間一人7分と短いが、熱く、精いっぱいのピッチが繰り広げられる。7分で自社の特長、将来への展望を語るのは難しいが、どの顔も自信が漲っている。審査基準はビジネスモデル、革新性、成長性など5つの項目で、5点満点で評価される。
その結果、今回の最優秀賞に輝いたのは、㈱Airon WorksCEOの寺田彼日氏である。優秀賞には ICS-net㈱ 代表取締役 小池祥悟氏が選ばれた。

最優秀賞に輝いたAironWorks㈱ CEO 寺田 彼日氏


受賞者のプレゼンの一部を紹介しよう。
最優秀賞に輝いた「Airon Works」は、イスラエル国防軍出身のホワイトハッカーが開発した実践型サイバーセキュリティ訓練・教育SaaSを提供する会社である。今や多くの企業にとってハッカー対策は急務だ。サイバー脅威から企業を守る次世代型サイバーセキュリティ訓練プラットフォームを提供。既に横浜銀行に導入されている。イスラエル発のグローバル企業として今後の展開の可能性、ユニークな発想とビジネスモデルが審査委員始め、視聴者の心をわし掴みにした。
 
優秀賞を獲得したICS-net㈱は、食品原材料のマッチングプラットフォーム「シェアシマ」を企画・運用している。外食産業用としてインフォマートがあるが、小池社長が発案した「シェアシマ」は、食品メーカー向けである。

 優秀賞を獲得したICS-net㈱ 代表 小池祥悟氏


前職の味噌のマルコメ時代、新商品開発の際、情報の入手や原料調達で苦労した経験から、食品メーカー向けのマッチングプラットフォームが必要と考え、ICS-net㈱を創業。「シェアシマ」とは「シェアしましょう」という意味とのこと。今、登録会社は2400社だが、28000社になればペイする見込み。マッチングで食品廃棄ゼロを目指し、食の世界をつなぎたいと熱く語った。


集計の間、恒例の審査委員兼メンターの青木氏、井川氏そしてボードウォーク・キャピタル社長 CEO 那珂通雅氏の3人の講評・鼎談が行われた。
「今回は業種も多岐にわたり面白い企業が揃ったね」
「どの会社も特長があって甲乙つけがたい」
「社長は若手からシニアまでと幅広く人間性もユニークだね」
メンターたちの温かい眼差しがNBCのピッチ大会の最大の持ち味だ。



鼎談する審査委員兼メンター 左から青木氏、井川氏、ボードウォーク・キャピタルCEO 那珂通雅氏



プログラム終了後はリアルの参加者も交えての名刺交換会となった。
どの顔も満足そうだ。
モデレーター青木氏の情熱と優しさが、そして毎回熱心に駆けつけてくれる審査員・メンターの面々の、厳しくも温かい眼差しが、参加企業の励みとなろう。

ビジネスマッチングの機会を創出
NBCのスタートアップ・プログラムは、資金調達、ビジネス創成などの機会を提供、後進育成に注力したいとの意向で、2019 年度にスタートした。自ら起業 上場を経験した創業経営者や VC 等がメンタリングを行うのだから、スタートアップ経営者にとっては頼りになる。「ファイナンス」「メンター」「アライアン ス」などについて、具体的に支援するサポーターとのビジネスマッチングの機会ともなっている。
前回から各証券会社の協賛もあり、育成も本格的だ。この日も各証券会社の若手社員が参加、会場は満席であった。
このビッチ大会へのエントリー企業は公募で、ビジネスモデル、マーケットサイズ、事業計画、マーケットにおける強み、今後のマイルストーンなどを、NBC会員経営者や大学教授などが綿密に審査するという。 だからこそこの日集まった8人の経営者も強者ぞろいだ。
創設35年の歴史を誇る経営者のネットワーク「NBC」、東京NBCは会員450人、全国では4000社に上る。ここ数年、アントレプレナー創出委員会を設置、本格的に若手起業家支援に取り組んでいる。
井川会長は「ビジネスはロマンとそろばん。このバランスが大切。今後も元気な起業家を育て、日本の元気に貢献したい」と語った。
ロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギー問題など経済界にも厳しさが蔓延している。しかしここにはそんな悲壮感は全くない。明日を志す新たなIPO企業が続々誕生、日本がアントレプレナー大国となることを期待したい。

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