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【ビジネスレポート】 スタートアップ・ワールドカップ2024東京

会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

トピックス

優勝はデジタルエンターテイメントアセット

スタートアップが自社の事業や有望性などをプレゼンして競うピッチ大会、「スタートアップ・ワールドカップ」の東京大会が2024年7月19日、東京・六本木で開催された。11社がエントリー、最優秀賞はデジタルエンターテイメントアセットが勝ち取った。会場には約1200人が詰めかけ、熱気に包まれた。この日はピッチ大会だけでなく、講演、パネルディスカッションなど盛りだくさんのプログラムで会場を沸かせた。その模様をレポートしたい。        (三浦千佳子)                           

 

スタートアップ・ワールドカップ東京に参加の面々 

 

2024年7月19日、東京・六本木のホテルには多くの人が詰めかけていた。アメリカ・カリフォルニアに拠点があるベンチャーキャピタル「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(以下ペガサス)主催の「スタートアップ・ワールドカップ」が始まるのだ。広い会場は多くの人で埋め尽くされた。その数約1200名。どの顔にも好奇心と元気が漲っていた。

今年で6回目となるこのピッチ大会、東京大会には226社の応募があった。
 その中から書類選考で選出された11社がこの日ピッチに臨んだ。

開会に先立ち、ペガサスのアニス・ウッザマン代表が登壇、挨拶した。

「毎年素晴らしいスタートアップが登場、昨年は日本選抜のアイリスが世界大会で優勝、100万ドル(約1億6千万円)の出資を勝ち取った。今年は既に京都大会が終了、8月には熊本大会も予定している。コンテストを通じて、有望なスタートアップを発掘し、提携を望む大企業と橋渡しするのもわが社の仕事。ぜひ頑張って頂きたい」と挨拶した。

その後スポンサー企業の挨拶に続き、登壇したのは河野太郎デジタル大臣だ。「元気なスタートアップの登場は日本経済活性化の原点、政府としてもスタートアップを後押ししたい」とエールを贈った。

河野太郎デジタル大臣 

 

■豪華メンバーのパネルディスカッション

その後開催されたパネルディスカッションは豪華メンバーで、会場に駆け付けた人や、リモートで参加している視聴者を喜ばせた。河野デジタル大臣以下、6人のメンバーをご紹介しよう。司会はネットイヤーグループ取締役の石黒不二代氏、メンバーにはMPower Partnersのキャシー松井氏、デジタルガレージ共同創業者伊藤穰一氏、マネックスグループの清明祐子社長、LinkedIn 日本代表の田中若菜氏という超豪華メンバーだ。

河野太郎氏ら豪華メンバーでのパネルディスカッション

テーマは「日本国の成長に必要なもの:グローバルスタートアップの創出、大企業とベンチャーとの間の連携、ベンチャー投資・提携・M&Aの急増が不可欠」                各人、持論を発言、終始熱い論議が交わされた。

 

■白熱のピッチ大会

16時からいよいよピッチ大会が始まった。

この日226社の応募の中からファイナリストに選出されたのは以下の11社である。

1 ランディット㈱ (駐車スペースの確保・利用・決済などのDX化推進)

2 ㈱HAKKI AFRICA (アフリカ・ケニアで中古車マイクロファイナンスを提供)

3 ㈱Yuimedi (医療データの前処理技術やコンサルティングで利活用推進)

4 ㈱シコメルフードテック(飲食店などの仕込みを外注できるサービス「シコメル」を展開)

5 ㈱オルツ (パーソナル人工知能であるalt(オルツ)の研究開発などAIサービス開発)

6 LocationMind㈱(位置ビッグデータを分析、人流の予測・コンサルティングなどを展開)

7 XANA LLC(AIを駆使したメタバースとソーシャルファイのプラットフォーム「XANA」を運営)

8 アーシャルデザイン(アスリート・体育会に特化した人材紹介・就職支援サービス)

9 ㈱Spectee (AIリアルタイム防災・危機管理サービス「Spectee Pro」を展開)

10 ㈱タスカジ (家事代行マッチング

サービス「タスカジ」を展開)

11 デジタルエンターテイメントアセット(ブロックチェーン技術を活用、ゲームや漫画を楽しみながら報酬が得られるプラットフォームを運営)

熱く語る米倉誠一郎氏


各社分野は多岐に亘っているが、どの企業も社会課題を解決するテック企業だ。ピッチ大会に慣れているのかパワフルで、動画やパワポ資料含め表現力も申し分ない。プレゼンターの強烈なインパクトは詰めかけた1200人の聴衆を沸かせた。

途中ピッチの中間では、一橋大学名誉教授の米倉誠一郎氏が駆けつけ、講演した。米倉氏は、この20年日本はほとんど成長していない。しかしダメなところを嘆くのではなく、日本の良いところを伸ばしていこう。世界で「日本という国があって良かった」と言われる国になろう。そのためのイノベーションが大切と、持論を語り聴衆を鼓舞した。

 

■デジタルエンターテイメントアセット優勝

審査結果が出るまでかなりの時間を要した。それだけ接戦だったということだろう。結果、優勝を勝ち取ったのはデジタルエンターテイメントアセットであった。山田耕三CEOに大きなトロフィーが贈られた。デジタルエンターテイメントアセットは山田氏と吉田直人氏が共同で創業したシンガポールに本社を置く、エンタメ関連会社だ。ブロックチェーン技術を活用してゲームや漫画を楽しみながら報酬が得られるプラットフォームを運営。ゲーム感覚で社会課題を解決するという事業が、東京電力やジェトロなどに採用され既に実績があること、グローバル展開の可能性など将来性が評価された。

優勝トロフィーを手にする山田CEO 隣は当会主催のアニス・ウッザマン代表


同社は10月にアメリカ・サンフランシスコで開かれる決勝大会に出場する切符を手にした。そこで優勝すれば100万ドル(約1億6千万円)の出資を受けることができる。

尚、2位にはランディット㈱が、3位入賞&ALHD賞(投資賞金1億円獲得)のダブル受賞に輝いたのは㈱アーシャルデザインであった。

小池百合子東京都知事

 

終盤には東京都知事の小池百合子氏が駆けつけ「東京都はスタートアップを強く支援している。有楽町には支援センターを設置しているので活用して欲しい」とスタートアップ支援の意気込みを語った。

■世界大会へ日本企業3社が出場

最後は審査委員を務めたアステリアの平野洋一郎社長が挨拶、どの企業も素晴らしく僅差であったことを語り、世界大会での健闘を祈った。

このスタートアップ・ワールドカップは今回で6回目ということもあり、毎年元気なテック企業がエントリーしている。会場には多くのスポンサー企業も駆けつけ、終始賑やかに実施された。主催がアメリカ本社のペガサスということもあり、規模も装備も盛大で、盛り上がりも半端なく、会場にいるだけでワクワクする。

10月にサンフランシスコで開催される世界大会には、デジタルエンターテイメントアセットの他、5月の京都大会で優勝したヘラルボニーと8月27日に開催される九州大会の優勝企業の3社がエントリーすることになる。

アニス・ウッザマン代表は、今後もこうしたピッチ大会を通じて、世界中の有望なスタートアップを「発掘」していきたいと熱く語った。昨年の世界大会では日本代表の「アイリス」が優勝し、10万ドルの投資を獲得した。今年も日本企業が優勝できるのか、今から楽しみだ。

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