会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。
柳井正FR財団理事長
ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が、2018年に創設した「ファーストリテイリング財団」(以降FR材団)は、さまざまな支援活動を実施している。設立以前2016年からは「難民子女のための学習支援教室」を実施してきた。支援スキームとしては、福祉法人「さぽうと21」が相談窓口や教室運営を行い、明治学院大学が学習支援教室や学生ボランティアを提供し継続してきた。
ここに今般、強力な助っ人が連携することとなった。㈱三井住友フィナンシャルグループ(以下SMBC)と、㈱公文教育研究会(以下KUMON)が加わったのだ。三者が連携し、日本における難民子女の教育・体験格差の解消に向け取り組むことに合意した。
ついては3月28日、明治学院大学に関係者が集合、メディア向け説明会が開催された。FR材団の石田吉生事務局長は、当財団だけで実施するより、多くの方々と連携して取り組むことで、支援の輪が広がり、より強化できると語った。
SMBCの藤井氏は、同社が2023 年度から「社会的価値の創造」を経営の柱の一つに据えて取り組んでおり、今般FR材団からのお声がけで連携が実現したと語った。
KUMONの三好氏は、同社が世界62か国で公文式学習を展開している経験から、この取り組みに賛同、公文式学習及びボランティアへの研修などを提供すると語った。協働事業の支援体制は図1の通り。
三者が連携することで、難民の子供たちの学習をキメ細かく支援、その成長と可能性を最大限に引き出したいという。難民の子女の中には、母国語との言葉の違いや文化の違いが大きな壁となり、将来に不安を抱える子供も多い。そこで学習支援を強化、学力を向上させ、高校・大学への進学や将来の可能性を広げようというのだ。
この日は、卒業生代表として、関西学院大学を卒業したミャンマー出身のソーコーレさんと、関西大学を卒業したエジプト出身のサーラさんが、自分の体験を披露した。小学生で来日した2人は、言葉と文化の壁や偏見の壁で大変なこともあったが、この教育支援のおかげで大学を卒業できた。今後は皆のために貢献したいと熱く語った。
左からサーラさん、ソーコーレさん、KUMON三好部長、FR財団石田事務局長、SMBC藤井部長、さぽうと21髙橋理事長
FR財団の仕事は事業活動と同じぐらい大切
柳井理事長は以前から世界の難民に心を寄せ「難民の方は好んで母国を出たわけではない。難民問題は全世界で取り組むべきだ」とコメント。FR財団を設立、積極的に支援に当たってきた。
柳井理事長から「FR財団の仕事はファーストリテイリングの事業活動と同じぐらい大切です」と常々言われていると石田事務局長。今回のことも、FR材団だけでなく、多くの方々を巻き込んで進めてはどうかとのアドバイスから、三者連携に踏み込めたと打ち明ける。
巨大企業の総帥としてファストリを率いる柳井社長だが、業績はもとより世の中に優れた企業でありたいという意識が強い。だからこそ自ら財団を創り、さまざまな支援活動を実施している。柳井氏が蒔いた小さな種が大きく育ち、さらなる輪を拡げることを願ってのことだろう。「事業活動と同じぐらい財団の仕事も大切」と語る柳井氏の想いに、その確固たる本気度が伺える。志のある企業家はぜひ柳井氏の後に続いて欲しいものだ。 (レポート三浦千佳子)