会社名や組織名・役職・内容につきましては、取材当時のものです。

開所式でテープカットする柳井正氏(右)と京大の山中伸弥教授(左)
京都大学iPS細胞研究財団は6月20日、iPS細胞を個別に作る研究施設「Yanai my iPS製作所」の開所式を大阪市内で行った。この施設の開所により、手作業だったiPS細胞製造工程を自動化し、費用を抑えて量産できるという。
山中伸弥理事長は「多くの企業に使ってもらい、拒絶反応の少ないマイiPS細胞の臨床応用に向け実証を進めたい。そして健康寿命の延伸に貢献したい」と語った。
このプロジェクトにファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が賛同。個人資産で2021年度から毎年5億円、9年間で計45億円を寄付。施設はこの寄付金によってつくられたので、Yanaiと同氏の名前を冠している。

メッセージとともに写真撮影に臨む柳井氏(左)山中教授(右)
■あらゆる人に iPS 細胞を
柳井氏は「未来 希望 幸福 あらゆる人に iPS 細胞を」、山中理事長が「iPS 細胞を医療へ」と、それぞれ書いたメッセージパネルとともに写真撮影に臨んだ。
「未来・希望・幸福は今からの日本にいちばん必要なもの。iPS 細胞が画期的な治療になって成功することを祈願してこのメッセージとした」と柳井氏。こうした医療研究への支援については「事業は社会の役に立たなければ繁栄しない。my iPS プロジェクトへの寄付を通して画期的な医療の発展に貢献していきたい」と語った。
山中理事長は「患者さん本人の血液から作る my iPS 細胞を使った再生医療は、免疫拒絶反応を抑える上では究極の医療。良心的な価格で iPS 細胞を企業等に提供できる環境が整ったことは大きな一歩」と。世界中の患者さんに使っていただける iPS 細胞を、ここ日本で作り、多くの方の健康寿命の延伸に貢献していきたい」と語った。
■オーダーメイドの「マイiPS細胞」がつくれる

Yanai my iPS製作所_自動製造室_作業の様子
ここでは患者本人の血液から採取した自家細胞でiPS細胞を製造し、再生医療の治療薬として実用化を進める「my iPSプロジェクト」を推進。他人の細胞によるiPS細胞に比べ、移植後の免疫拒絶反応が抑えられるという。
これまでは技術者が手作業で行っており、患者1人あたり5千万円の費用と、半年間の期間を要していた。ここにはドイツ製の細胞培養装置を14台導入、全自動で培養、最適な培養方法を確立。1人分の製造コストを100万円ほどに、期間を3週間に抑えられ、1年間で千人分に対応できるようになるという。
プロジェクトが発足してから5年、大きく動き始めることだろう。山中教授は「これからが本番。国内の大学や企業がワンチームとなっていきたい」と語った。
柳井氏は2020年6月、個人として京都大学に総額100億円を寄付すると発表し、世間を驚かせた。本庶佑氏、山中伸弥氏と共に会見を行った。山中氏に関しては、新型コロナウイルス研究プロジェクトに5億円、京都大学iPS細胞研究財団に45億円を寄付すると。その一部で今回の施設が完成したということだ。
柳井氏は「もっと企業や個人からの寄付がなければ、行政からの資金だけではこれからの研究開発はまわらない」と語った。
欧米では、企業家が研究支援や慈善事業などへ寄付する文化が根付いているが、日本ではそうした文化が根付いていない。日本でも成功した企業家らによる寄付の文化が広がることを願いたい。「柳井氏に続け!」である。(リポート三浦千佳子)
(写真提供:公益財団法人京都大学 iPS 細胞研究財団)